この記事はこんな人にオススメ
  • コミュニティ・スクールがなかなか進まないと感じている方
  • 学校・地域・行政が一体になっていないと感じている方
  • いろいろやったけど、何をやったら良いか分からなくなってしまった方

コミュニティ・スクールは学校と地域社会が連携・協働し、子どもたちの教育環境をより良くするための仕組みとして導入が進められています。

しかし、必ずしもすべての学校でスムーズに運用されているわけではなく、むしろほとんどの地域・学校で連携・協働が難航する場面も見られます。

こんな具体的な質問もいただきました。

うちの市では、コミスクは行政主導で設置され、校長が運営委員を決めたので、自治会長、元PTA会長、といった評議会委員と同じような顔ぶれ。「別に何か新しいことをしなくていいです。」という一声から始まりました。

形骸化させてはいけないと、私はソルティーさんのマニュアルに沿って進めようと思いましたが、校長が主導の体制なので、みんなでビジョンを考えるとか、そんな雰囲気ではないのです。

一年目は、とにかく理解してもらおうと、次のようなことをしました。
①コミスクが何であるか、メンバーに理解してもらう
②地域の教育支援団体にはどんなものがあり、今までどんなことをやってきているか調べる
③学校の先生たちはどんなことをやってほしいと思っているかアンケートをとる。

まずは運営委員とつながりたいから、連絡手段を作ってほしいと何度もお願いしましたが、委員会に聞いてみるとか、毎回ごまかされ、未だに出欠は教頭が電話連絡しています。

ならば先に地域を巻き込もうと、まちぢから協議会という場に校長と一緒に出させてもらい、これから地域学校協働本部を作り、協働活動をしていきたいとお願いだけしに行きましたが、校長から「まだ何も決まっていないのに、混乱させてしまったね」と苦笑いされてしまいました。

はて、私はここからどう動けばいいのでしょうか?

「コミュニティ・スクールが推進されない理由は何ですか」という問いに対する答えは一筋縄ではなく、学校、地域、行政それぞれが抱える課題が複雑に絡み合っています。

本記事では、そうしたそれぞれの課題に焦点を当てながら、私が具体的に解決してきた事例を紹介していきます。

この記事の編集者
塩畑貴志(ソルティー)
塩畑貴志(ソルティー)
社会教育士

NPO法人教員支援ネットワークT-KNIT 代表理事。地域・家庭・学校が同じバランスを持って子どもたちを幸せにする仕組みを作るために活動中。専門は地域学校協働活動とコミュニティ・スクール。

コミュニティ・スクールの立ち上げ、運営を学校運営協議会委員、地域学校協働活動推進員などさまざまな立場から経験し、その実践経験・研究報告を全国の学校運営協議会・PTAに研修・講演している。

「分かりやすくて楽しい」というフランクな講演スタイルで人気を集めている。

講演依頼はこちらから
※研修の様子はYoutubeをご覧ください。

コミュニティ・スクールとは何か

まずはおさらいから始めましょう。

コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)とは文部科学省が2004年に作った制度。簡単に言うと『地域とともにある学校づくり』を推進する仕組みです。

コミュニティ・スクールの仕組みと相関図
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地域の代表や、専門家が年に数回集まり、より良い学校運営や、地域の将来について議論(熟議)を行い、学校運営の承認を行う制度を学校運営協議会。

決まった方針を地域のみんなで連携しながら達成していくための地域コミュニティを地域学校協働本部と言います。

しかし、コミュニティ・スクールについて教員側からは「必要ない」地域側からは「進まない」という声をよく聞きます。

ソルティー
ソルティー

というより、ほとんどの学校ではこの状態になっていると思われます。

コミュニティ・スクールが円滑に運営されるためには、行政・学校・地域がそれぞれの役割を深く理解し、対話を重ねることが重要なのですが…、その対話を重ねることすらもできず、どうすれば良いか途方に暮れてしまうという状況が多いのです。

コミュニティ・スクールが進まない背景を知る

では、なぜそのような対話を重ねることもできない状況になってしまうのでしょうか?

地域、学校、行政、それぞれの視点から進まなくなってしまう『つまづきポイント』を書いてみました。

学校側の背景

まずは学校の先生がどう思っているのかを伝えていきます。これはいろんな学校の先生たちから聞いた本音です。

協力してくれる地域が何ができるのか分からない、示されていない

地域の人が職員室にいるんだけど、あの人は何者なの?なんで来ているの?

お願いしようかなって思うんだけど、結局頼めることが分からないので、何頼んでいいのか…

校庭の草刈りとかお願いしようかなって思ったんだけど、刈払機使うって言うんだよね…。そうなると保険がないと怖くて任せられないなぁ。

学校の先生は地域の人たちが「ボランティアに来たよ!」とゾロゾロと集まってきても何をお願いして良いのか分からないというのが本音なようです。

そもそも関係性も薄い状態なので、この人は一体何者!?と迷ってしまうこともあるでしょう。

学校運営協議会委員や地域学校協働活動推進員も同じで、市教委から委嘱されていても、特に案内が入るわけでもなく、自分たちで関係性を作っていく努力をしないと「あの人は何もしてくれない人だな」と思わされて終わるのがオチです。

関係性づくりは特に重要なポイントとなるでしょう。

企画をしても良いけど、「どうせやるのは自分たちでしょ」って安心して任せられない

学校運営協議会で何か決まったみたいだけど、その企画って地域の人が率先してやるわけではないらしく、つまり自分たちがやるんだよね?言いっ放しで関わらないのは勘弁して欲しい。

地域と学校の連携?ってやってて、自分の授業と地域の人が一緒にやるみたいなんです。でも、授業の構成考えるのこっちなんですよ。どうやって地域の人にアポとろうとか考えると胃が痛くなります。

管理職も管理職で地域をお客さん扱いしてるんですよね。そうなったら僕らのような一教員がお願いできないじゃないですか。だからこっちにしわ寄せ来るんですよ。

多忙を極める学校現場では「これ以上の負担は無理」といった感情が根強くあります。現状の業務の中で、さらに地域連携という新たなタスクが加わると感じれば、興味を持つ余裕が生まれません。

地域は「お手伝いするんだから業務が減る」と思っていますが、実際に連携するとやり方が変わり、自分一人だけでは進まなくなり、さらに手伝ってくれる人が少なければ業務は『目に見えて増えてしまう』のです。

特に人員や時間に余裕のない小規模校では、「必要ない」と考える教員も少なくないでしょう。

地域側の背景

次に地域の方や、ボランティアの方がどう思っているのかを伝えていきます。これも地域の方々から聞いた本音です。

解説に解説が必要なほどの溝がある

学校運営協議会って何するのかなって思ったら、今年度はこれ頑張ります!年間行事はこれします!承認ください!ってお互いに深く話し合うことなく終わったよ。あれはなんだったんだ?

学校運営協議会で授業見学させてもらったんですが、子どもの姿が見れて嬉しかったけど、終わってから「どうでしたか?」って言われて…。いや、どうって言われても、何も気にせず見てたから正直なにも浮かばないというか…。

学校運営協議会?熟議?コミュニティ・スクール?見たことない単語ばっかりで混乱する。PTAと何が違うの?評議員ってあったけど、あれとはどう違うの?って先生に質問したんです。そしたら「実は私もよく知らない」って。なんだそりゃって思っちゃった。

コミュニティ・スクールが進まない背景の一つとして、学校が何を地域に求め、何を期待しているのかが根本的に理解できていない点があります。

第一回目の学校運営協議会では、学校側は丁寧に説明しようと学校の中を見学させ、グランドデザインや、年間予定表を見せて解説をします。

これが悪いとは言いませんが、これまで学校とまったく関わってこなかった人にとってはよく分からないことだらけなのです。

例えばこんな意見が見せてもらう側の本音です
  • 学校見学させてもらっても、何をポイントに見れば良いのかが分からない
  • 『主体的な子ども』という言葉で、与えられた枠組みの中での自由なのか、何も枠がない中からの創造する自由なのかという人によって主体性のイメージがズレていることがある
  • 『自分らしく』という言葉の自分らしくが何なのかが実はピンと来ていない

学校側が目指すビジョンや目的が明確に伝わらなければ、地域もどのように協力して良いのか分からず、かえって無力感を抱くことがあります。

その結果、学校と地域が一歩を踏み出すことが難しくなり、理念を共有できている先生たちだけが頑張るコミュニティ・スクールになりがちです。

どこまでできるのか分からない、声をかけてくれない

「よし、みんなで学校のため、子どものため頑張ろう!」ってボランティアチームが集まったんですよ。そしたら「今日は何もありません」って言われてしまって。必要だって聞いて集まったのに。

学校の先生に何をして欲しいですか?ってアンケート出したんですよ。そしたらほとんど返って来なかったんですよね。かろうじて返ってきたものは「落ち葉拾ってほしい」でした。それはやってるんですって!もっと助けてって言ってくれないと、どこまでやっていいのか分からない!

「地域のボランティアに入ってほしい」そう聞いていたので、たくさん人を集めて、奉仕作業とか定期的にしていたのに、校長が変わったら「部外者は学校に入るな!」って言われて、それからどうしたら良いか分かりません。

先生たちの『協力してくれる地域が何ができるのか分からない、示されていない』の逆パターンです。地域も実は先生たちが何も言ってくれない、助けて欲しい箇所を教えてくれないと思っています。

学校の先生はあまり感じられないかもしれませんが、地域には学校に対して協力したいという意欲を持つ人々が意外とたくさんいます。

しかし、地域の方々は学校の制度をよく知らない方ばかり。声をかけてくれない、何を求めているのか分からないと思っているのです。

困ったことに安心して聞ける先が見つかったとしても、異動があるため、相談先を見失ってそこから連携・協働が進まなくなってしまうケースも多々あります。

このような状況では、コミュニティ・スクールに参加するモチベーションが低くなり、地域からの協力を得ることが困難になっていくでしょう。

行政側の背景

続けて、行政の本音を見てみましょう。コミュニティ・スクールの伴走支援として教育委員会が主に関わることになりますが、実は伴走支援する側も困っています。こちらもなかなか聞くことがない本音を集めたので、ぜひご覧ください。

課によって担当が分かれていて動きにくい

教育委員会で伴走しろって言われていますが、実際は一枚岩ではないので、非常に連携が取りづらいと感じています。

学校教育課、生涯学習課とどちらがコミュニティ・スクールを担当するのかヒヤヒヤなんです。任されたいとは思っていない市もあって、そのような場所では責任を押し付け合っているみたいですよ。

伴走と言っても、何をすればいいかは担当が考えることになっています。市によって必要なことは違う…とは分かっていつつも、何をしたらいいのか分からず、とりあえず動き出そう!とやると、市民の方からクレーム。そうなると正直、気持ちも萎えますね。

行政内部でも、コミュニティ・スクールの推進に関わる担当課が多岐にわたり、連携が取りにくい状況があるようです。

「学校に設置するんだから学校教育課ではないか」、「一生涯の学びに繋がるのであれば生涯学習課ではないか」とそれぞれに言い分が存在しますが、どちらも実は正しいです。

ベースは社会教育でありつつも、学校教育の中に設置するという学社融合の形が取られているため、今までにない新しい形となっています。

「私達には関係ない」と言っている時点で間違っている可能性があるので注意しましょう。

コミュニティ・スクールだけ進めれば良いわけではない

生涯学習課は高校生ボランティアや、家庭学習支援などなど、一生涯に渡る学びを支援しているので、幅広いジャンルを取り扱います。コミュニティ・スクールの割合は多くても40%くらいが限度じゃないかな。

学校教育課は学校施設の管理や、教科書、カリキュラムなどなど、学校教育に関する学びの指導をします。コミュニティ・スクールは設置が主な役割で、その後は学校に任せていますね。

行政の立場から見ると、コミュニティ・スクール以外にも数多くの施策や事業を進める必要があります。そのため、特定の取り組みに過度に注力することが難しいのが現実です。

コミュニティ・スクールが行政の多岐にわたる課題解決の一環であることを意識し、あくまでも伴走。主体は学校や地域であることを理解していきましょう。

全体が抱える課題

実は全体が抱える課題もあります。もちろん、解決できているケースもありますが、「もしかしたら自分たちもそうなっていないか」を確認してみてください。

コミュニティ・スクールのことをよく知らない

コミュニティ・スクールって何?なんで行うの?

評議員から協議会委員になってと言われたが、何が変わったんだ?

うちの市は地域と連携ができているからコミュニティ・スクールは必要ありませんよ。

コミュニティ・スクールそのものの概念が十分に理解されていないことも、進展を妨げる要因の一つです。

もちろん、導入された直後はまったく分からなくて当然ですが、学ぶ機会を用意していなかったり、用意しているのに参加しようとせず知ろうとしない状況が続くと一向に進展はできないでしょう。

学校、地域、行政がそれぞれ十分な知識を持たなければ、何を目指して活動を進めるべきかが曖昧になり、思うように進まない結果を招きます。

ついやりたくさせる環境設定が必要となるでしょう。

お互い仲良くなっていない

地域の人には学校に入ってきて欲しくない。

学校の先生が何考えているか分からない。

学校と地域が主体なので、こちらから何か手を出すことはありません。

最も基本的な問題は、学校・地域・行政の間で信頼関係が十分に築けていないことです。

コミュニティ・スクールは『本音を言える空気感と信頼感』+『困っていることを共有し、支えあえる環境』の2つが揃って真価を発揮します。…っと言葉にするのは簡単でも、実際にこの状況を学校環境化で実現するのは並大抵の努力では成しえません

ただ、一つ言えるのは一方的な要求や無関心では、協力関係を構築することが難しくなります。お互いの関係性を深める努力が、コミュニティ・スクールの推進には欠かせない基本条件です。

信頼を築くための対話や交流の場を増やすことが重要でしょう。

コミュニティ・スクールが進展した具体的事例

それではここからはさきほどの課題・背景を元にアプローチを行い、実際に変わったという私自身の体験を事例としてお伝えします。もちろん、どこの地域でも効果がある施策とは言えませんが、考えるキッカケの一つにしてもらえたらと思います。

地域の事例

まずは地域側に対して効果があったなと思える事例をお伝えします。

仲良くなるためのオンライン飲み会を開く

ソルティー

委員として集められたけど、皆さんは知り合いですか?

知ってはいるけどね。なんで選ばれたのか、何していきたいのかは知らないなぁ。

ソルティー

じゃあ、飲み会しちゃいましょう!ついでにこれからのことも話していければ!

地域の方々と学校関係者が自然な形でコミュニケーションを取る機会をつくることは、コミュニティ・スクールを進める上で大切な一歩です。そのための取り組みの一例として、非公式な場で親睦を深める『飲み会』は堅苦しい議論を避け、日常的な話題を通じてお互いの人柄や価値観を知ることができるので、非常に効果がありました。

ただ、集まることが難しいし、一回ではお互いを理解していくのが難しい。そう思ったので、「オンラインでやりませんか?」と難しいとは思いつつも提案してみたことが良かったと感じます。

オンライン飲み会
オンライン飲み会だと子どもが参加することが多く、自然と緩やかな雰囲気に。

最初はオンラインで参集されること自体に戸惑いはあったものの『オンラインで人と話して酒を飲み交わす』というのは、新しい刺激にもなって楽しく飲み会ができました

慣れてしまえばオンラインでの呼びかけにも反応いただいたり、緊急のミーティングにオンラインが使えるようになったので、練習としてもオンライン飲み会は非常に良かった施策の一つです。

学校に熱心に通い、観察する

何をお願いしていいか分からないです。

ソルティー
ソルティー

例えば、町探検のボランティア集めとかできますよ。算数の授業とかのボランティアも集められます。

え、そういうのも頼んで良いんですか?

地域が「お願いされるのを待っている」という状態になってしまうと、お互い何もしてくれないと思ってしまう…。だったら、自ら観察して何に困っているかを見聞きし、自分からできることを探すほうがよほど効果ありました。

学校に足を運び、教育現場の実際を知ることは、コミュニティ・スクールの前進に貢献する大切な行動です。学校での活動を見学し、できることで貢献していくことは、地域の人々が学校の課題や取り組みに理解を深めやすくなります

活動の様子
印刷のお手伝いをすることで、何に日常的に困っているのかが分かってくる。

同時に、学校側も地域の方が熱心に関心を持っていると知ることで、意見を取り入れてくれるようになります。このように、相互理解の積み重ねが、必要ないと言われがちなコミュニティ・スクールの価値を再認識させる機会へとつながっていくでしょう。

小さなことでも一生懸命行う

落ち葉拾いとかやっておいてください。

ソルティー
ソルティー

任せてください!めちゃくちゃキレイにします!

まさかそこまでやってくれるとは思わなかった。

コミュニティ・スクールへの貢献には特別なスキルや大掛かりな提案が必要というわけではないと思っています。学校の先生は何をお願いして良いか思い浮かばず「校庭の落ち葉拾ってください」と言うことが多いです。

しかし、それをチャンスと捉え、本気で学校の清掃や草むしり、地域行事のお手伝いといったことを行いました

奉仕作業
学校は草との戦い。

その結果、「まさかそこまでやっていただけるとは思いませんでした」とか、「なんでそんなに頑張れるんですか?」と驚かれ、それ以上のことをお願いされるようになったこともあります。

先生も結局は人間です。好意的な姿勢を示し、どんな小さなことでも、真心を持って参加することで地域と学校のつながりを強め、具体的な成果と良好な関係構築をもたらすのだなと感じます。

得意なこと、できることを共有する

ソルティー
ソルティー

はじめまして!ソルティーです!ICT支援員を行っていた経験があるので、デジタル関係が得意です!

Apple Watchの使い方教えてほしい!

図書室の電子黒板と自分のアイパッドを繋げたいです!

地域の方々が自分の得意分野や経験を共有することは、コミュニティ・スクールの新たな可能性を広げると思います。

僕の場合は学校の先生全員に名刺交換をして挨拶をしたり、プロフィールカード(どんな経歴があるのか?ここではどんなことをしているのか?などをまとめた資料)を渡したりしました。

地域学校協働活動推進員プロフィールカード
プロフィールカードを作って先生全員に配った。(自分でも使いたい方はこちらからダウンロード

その結果、デジタル関係の悩みや、相談をいただけるようになりました。このようにそれぞれができることを共有し、その能力で支援を行うと、より活気ある活動になると感じます。

学校の事例

ここからは学校の先生が行動をすることでコミュニティ・スクールが進んだ事例を紹介します。これらは学校の先生の対応が変化して進展したと実感した内容を盛り込んでいます。

地域の打ち合わせに出る

コミュニティ・スクールが推進されるためには、学校側が地域との接点を持つことが欠かせません。その一つの例として、学校の教職員が積極的に自治会や地域住民の集まりに参加し、顔を合わせて交流を深めることが挙げられるでしょう。

僕の場合は、地域学校協働本部の打ち合わせは21時からオンラインで集まって話していました。そこに学校の先生が自主的に参加してくれたことで、学校の具体的な悩みが分かり、次の一手を選択するのに非常に役立ちました

地域学校協働本部オンラインミーティング
僕の場合は、飲み会&ミーティングにしていました。

このように学校の先生が地域の打ち合わせに出ることで、学校と地域との間に信頼関係が生まれ、地域住民が学校の活動を支援しやすい環境が整いやすくなるでしょう。

注意

学校の時間外の活動となることも多いので、地域の方は学校の先生を無理やり誘うことがないように注意しましょう。

コミュニティルームを開放する

コミュニティ・スクールの取り組みを活性化させるためには、学校が物理的に地域住民に開かれた場所であると感じてもらうことが重要です。例えば、学校内の会議室や空き教室を「コミュニティルーム」として地域活動に利用できる場所として提供する工夫があります。

僕の場合は、PTA室をコミュニティルームに変更してもらったことで、地域の人と接点を生める場所へと変化しました。また、最近では学校運営協議会でこそ認められてはいないものの、校長に認められて、その部屋が校内フリースクールの活動に近くなっています

校内フリースクール活動
はじまったばかりの校内フリースクール。教室に居られない子に寄り添う。

これにより、地域の人々が学校や、子どもたちに親しみを感じるようになり、コミュニティ・スクール活動への関与が促進されました。

この取り組みは、地域住民が学校と連携しやすい雰囲気を作るために非常に効果的です。

提案を無下にしない

地域住民からの提案や意見に対して、学校側がどのように応じるかも、コミュニティ・スクールの推進において重要なポイントです。

僕の場合は、コロナ禍だったこともあり、「地域を入れたくない。学校のことは学校で。」という価値観の校長先生がいて、地域がまったく入らなくなった結果、学級崩壊が起こり、地域からの信頼も0になってしまったということがあります。

その後、異動があってから提案を聞き入れてくれるようになり、ちょっとずつ地域が関わることによって、地域からの学校の信用・信頼が回復しつつあります。

学校運営協議会
ホワイトボードを使って提案をまとめていく。

たとえ提案が学校の現状と合わない場合でも、対応を無下にせず、前向きに検討する姿勢を示すことで、地域住民が主体的に動きやすい環境が整います。

困っていることを共有する

学校が抱えている課題を地域住民と率直に共有することも、コミュニティ・スクールを進める上で大きな効果があります。

実際、多くの学校で進まない理由は「学校の先生が何を考えているか分からない」と言われることです。やってほしいことが分からず、落ち葉拾いばかりさせていてはいつまで経っても地域との協働は生まれません

地域学校協働活動は、今まで行っていた学校の行事や、特別活動を一緒に行うことが大きな変化を生みます。まずは一緒に行いたいという意識に切り替え、困りごとを共有すると、思わぬ形で解決策が見つかる場合もあります。また、このようなオープンな姿勢が地域住民に「学校を支えたい」という気持ちを生み、コミュニティの一体感が深まるきっかけとなります。

行政の事例

最後に僕自身が行政(教育委員会の人)と一緒に行ったことで進展したと実感した内容を紹介します。

コミュニティ・スクールに関する研修会を企画する

コミュニティ・スクールを推進するためには、関係者がその役割や重要性を具体的に理解することが欠かせません。まずは、行政側が主体となり、コミュニティ・スクールに関する研修会を企画することが有効です。

僕の場合は、行政側とやりたいと思っている僕自身が出会い、企画段階から一緒に研修会を練られたことが大きかったなと思います。

このような研修会では、事例紹介や専門家の講演を通じて学校運営協議会や地域連携の目的を伝えるだけでなく、具体的な取り組み方法や課題解決のアイデアを共有する機会を設けることで、市内全域が活性化するキッカケを生みます。

座学だけではなく、ワークショップを組み合わせて実施することで、『自ら考え、真似できる』ようにすれば、さらに大きな効果を生むでしょう。

コミュニティ・スクールのメイン担当者を付ける

行政担当者の中でコミュニティ・スクールの推進メイン担当者を明確に配置することは、取り組みを進展させる上で非常に重要です。

市内の地域学校協働活動推進員の連絡を行ったり、学校運営協議会の進捗を把握する…そうすれば、コミュニティ・スクールの総合窓口が出来上がります。実際、僕の場合も「コミュニティ・スクールといえば◯◯課の△△さん」という流れができたことで、教育委員会との連携がスムーズになりました。

担当者が明示されることで、地域住民や教育関係者との信頼関係の向上にもつながります。特にメイン担当者には『社会教育主事』、『社会教育士』などの社会教育に明るく、知識・経験豊富な方のほうがより進むでしょう。

各学校の学校運営協議会に出席する

行政側が各学校の学校運営協議会に積極的に出席することは、コミュニティ・スクールの推進に欠かせない要素です。

僕が関わっているとある市では、市内全学校の学校運営協議会に課として分担して回っていて、情報が課内に共有されているようでした。このおかげで、学校運営協議会の場や、地域学校協働活動推進員が困っている時に「他の学校ではこんな取り組みをして乗り切ったよ」、「こんなことできる人がいるよ」という具体的なアドバイスができます。

また、このような取り組みを通じて「行政がコミュニティ・スクールを必要ないと考えているのではないか」という誤解を防ぎ、現場との距離を縮めることができるのも良い効果だなと思います。

コミュニティ・スクールは全員が関わってはじめて真価を発揮する

それではまとめです。

大事なことはお互いに見てみぬフリをしないこと!
今回のポイント
  • 地域、学校、行政、そして全体に関わる課題がそれぞれ違っている
  • お互いに警戒・牽制し合っている状態だと何も進まない
  • コミュニティ・スクールについての理解不足が全体として大きい
  • 解決するために:お互いに仲良くなろうとすることがまず大切
  • 解決するために:定期的に会い、接触回数を増やす
  • 解決するために:できること、してほしいことを共有する
  • 解決するために:提案を無下にせず、まずは受け入れる
  • 解決するために:研修会を企画し、みんなで考える
  • 解決するために:メイン担当者を付ける

思ったよりも超大作になってしまいました。その分、実事例として真似できる内容を共有できたかと思います。

大事なことはお互いに理解し合おうという気持ちです。定期的にあったり、情報を共有したりと極々当たり前なことを大切にしていくことが進める上で大前提となります。

簡単ではないからこそ、小さな取り組みを積み重ねて、大きな変化に繋げていきましょう!

他にもコミュニティ・スクールの初歩的な内容への記事もあります。ぜひご覧ください。

その他、コミュニティ・スクールに関するマニュアルもありますので、もっと深く知っていきたいと思っている方はご覧ください。