コミュニティ・スクールを行う時、学校主体になっていませんか?

もちろん、舞台が学校になるので、学校の意見を無視することはできませんし、最終的な決定権は校長が判断します。

しかし、その結果として

「学校改革したいと思っているのにまったく何も変わらない」
「子どもたちにより良い教育をしたいと思っているのによくなっている気がしない」
「保護者からのクレームが多く、非常に多くの時間を取られてしまう」

こんな状態に陥っている学校が多くなっていて、コミュニティ・スクールに反対する学校教員も多いようです。

このような課題を解決するのがコミュニティ・スクールであり、そのコミュニティ・スクールの運営は必ず地域が主体で行うほうが、最終的にうまく行きます。

今回は、コミュニティスクールは地域が主体的になったほうがいいという理由についてお話ししていきたいと思います。

コミュニティ・スクールで地域が主体になるべき5つの理由

コミュニティスクールでは変えることのできない学校側のさまざまな背景があります。

ここでは、コミュニティ・スクールは地域主体になったほうがうまくいきやすい理由についてお話ししていきたいと思います。

校長先生は基本2年。長くて3年で異動してしまうので学校改革できない

異動・転勤でもらうプレゼント

まず、学校の仕組みとして校長先生が基本2年、長くて3年ほどで異動してしまうという背景があります。

そのため、校長先生は大体こんな流れになります。

  1. 1年目

    新しい学校に慣れたり、地域の人たちに知ってもらうための1年

  2. 2年目

    今の仕組みを理解するための1年

  3. 3年目

    何が今の学校で良くない点を理解し、どのような原因があるのか分かる1年

つまり、その学校のことを理解できたら異動してしまうのです。よく理解できないまま、大きなことをやろうとして文句を言われてしまったり、的外れな改革をしてしまうケースも多い。

そういう校長の噂や、姿を見ていると、ほとんどの校長先生は「まぁ、波風を立たせるようなことをせず、無難に過ごしたほうが良い」という結論に至るのです。

実際に改革を推進しようと思うともっと長い年数が必要です。

  1. 4年目

    改革の構想を練る1年

  2. 5年目

    改革を実行に移す1年

最低でも5年はかかると思っています。

ポイント

有名になった麹町中学校の学校改革も5年の年数を費やしたようです。

参考:日本中が注目する麹町中学の改革。工藤校長が語る、教育の最上位目標。

校長先生が3年くらいで異動してしまうと学校はほぼ変わりません。例え力がある校長でも、本当に小さな改革しかできない。

正直、社会や、世の中の変化にまったく追いつけず、働き方改革もできないままになるでしょう。

校長以外の先生たちも3〜8年で異動してしまう

校長だけでなく、教職員も3年から8年ほどで異動してしまいます。

学校の先生が主体となっていたり、地域と学校のコーディネーター役を先生が名乗り出て、実践するケースも多々あります。

しかし、この制度で異動をしてしまうと、せっかく築いてきた信頼関係や、地域との人脈をまた0から協力体制を構築し直すことになります。

笑顔の連鎖を繋げたい

異動は全国の学校で強制的に行われているので、止めることはほぼ不可能に近いし、異動することによってメリットもあるので、一部の側面から撤廃することはしないほうが良いと思っています。

だったら、異動に合わせたスタイルに切り替えたほうが良いと考えます。

先生は外部から異動してくるので、地域の良さや、人を知らない

さきほどの異動の件とも深く関係するのですが、異動した教員は地域の良さや、人をまったく知らない状態です。

新しい場所に来ると、また一から学校のことを覚え直さないといけませんし、また一から仲良くなり、人脈を作るしかありません。引っ越しを何回も経験するのと同じような状態です。

どのように仲良くなったら良いか攻めあぐねている女性

そのような状態で「周りを変えろ」というのは、かなり無茶な難題だなあと思わざるを得ません。

では、「地域の良さを教えるよ!」ということにもなりますが、正直、そんな余裕や、時間はありません。教員はたっぷりと隙間の時間を作るのは難しいのです。

つまり、よほど力がある先生でないと、学校改革は難しいのです。

教員の主目的は教育。地域活性化ではない

先生たちの主目的は教育です。教えることや、伝えることです。

地域を活性化したり、地域と仲良くなったりというのは学校や、教員の目的ではありません。

もちろん、地域の良さを伝えたり、文化を伝えたりして欲しいと思っている地域の方も多いでしょう。しかし、学校は宗教や、文化の自由を尊重しているため、特定の宗教や、文化、生活の在り方を教えることはほとんどありません

つまり、地域の良さを伝えることはほとんどないのです。どうしても地域の良さを伝える場合は、地域自慢活動や、地域の人を読んでの伝統文化授業で行うことになります。

先生たちのお客様は子ども。保護者や、地域の人ではない

子どもたちを優先する

先生たちの対象者は地域の大人や保護者ではなく、子ども達です。そのため、誰の意見を一番優先して聞くか?というと、子どもたちの声なのです。

しかし、子どもたちの声だけを聞いていても、先生たちや、地域が幸せになるケースは少ないです。もっと誰もが幸せになるためには、全体を俯瞰して見る視点が必要です。

しかし、俯瞰的な目線で見るためには、時には敢えて、子どもたちから視点をズラす必要があるのです。教員は子どもと密接に関わり過ぎて、その視点を持つことが難しいとも言えます。

コミュニティ・スクールを地域主体で行うと学校改革に繋がるのか?

コミュニティ・スクールを地域主体で行うと、第三者的な視点により、継続・安定的なコミュニティを形成しやすいです。

どのようなメリットがあるのか?を簡単にまとめてお伝えします。

学校、地域別の詳しいメリットをまとめた記事はコミュニティ・スクールのメリットをご覧ください。

責任と立場が学校の先生と近くなるので、意見が通りやすい

ちょっと偉そうな立場の男性

地域主体でコミュニティ・スクールを行うと、責任と立場が教員と近くなり、地域側の主張が無視できなくなります。

そもそも、コミュニティ・スクールは地域と学校が行うという法律の下で行っています。

そして、学校運営協議会のメンバーは特別公務員という役職になります。

委員については、公立学校としての運営の公正性、公平性、中立性の確保に留意しつつ、適切な人材を幅広く求めて任命するとともに、協議会において合議体として適切な意思形成が行われるよう、研修等を通じ、委員が協議会の役割や責任について正しい理解を得るよう努める必要があります。また、協議会の委員は、地方公務員法第3条第3項第2号に該当し、特別職の地方公務員の身分を有することになります。このため、地方公務員法上の守秘義務等は課されませんが、委員は、児童生徒や職員等に関する個人的な情報を職務上知り得る可能性があることから、教育委員会規則において守秘義務を定めるなどの適切な対応が必要です。

出典:「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(第47条の5)条文解説-文部科学省

そのため、学校や、教育委員会と同じような責任を持ち、同じような立場になって発言できます。

同じ責任と同じ立場を持つ、そうすると相手は簡単に断ることができません。断る場合は説明責任を求めることもできます

そのため地域がやろうとしていることがPTAや、学校評議員よりも実現しやすいのです。

第三者的な視点で学校の当たり前を壊しやすい

地域主体になると、第三者的目線になるので学校の当たり前を壊しやすいです。

学校はいろんな形骸化した活動があります。中には理由がよく分からないものも意外とあり、それが教員の時間を奪っています。

先生たちはこの形骸化した活動を止める勇気はなかなかなく、気付きやすい若手教員では管理職に言っても通らないこともしばしば…。

「保護者から言ってもらえたら先生たちは無視できないと思います」

というお話もよく聞くので、地域側からどんどんアプローチして、話し合い活動を円滑化する必要はあるかなと思います。

理想の児童像を追求し続ける運営ができる

地域が主体になると異動もほとんどないので、理想の児童像を追求し続けられるでしょう。

学校の理念や、考え方が浸透するまでにはすごく時間がかかります。基本方針・方策、内容を詰めるのに会議もたくさんするでしょう。その時に異動というのは厄介で、この制度のせいでまた覚え直し…なんてこともあります。

しかし、地域主体だとメンバーに異動はほとんどありません。あるとしても引っ越しくらい。

PTAだと保護者の立場じゃないと参加しない…というケースが多いですが、学校運営協議会の参加者は保護者であるかは問わないのです。

学校に関わる人たちのコミュニティを形成しやすい

仲良く会議!ワクワクします!

さきほどの件で言うと、地域主体だと学校に関わるコミュニティを形成しやすくなると思います。

良い活動を重ねれば重ねるほど活動が認知され、人も集まり、活動も活発化しやすいです。これは地域活性化や、あいさつ運動、町づくりにも繋がる大切なことです。

要注意

ダラダラと年数だけを重ねると逆になります。悪い活動が認知され、人も集まらず、形骸化につながります。もし、その状態になったらリセットかけるほうが良いと思います。

学校運営協議会の権限の中には、教職員の任用に関わる権限があります。

第五項は、学校運営協議会は、学校の職員の採用その他の任用に関する事項について、当該職員の任命権者に対して意見を述べることができることを規定している。学校運営協議会の意見は、当該学校の運営の基本的な方針を踏まえて実現しようとする教育目標、内容等に適った教職員の配置を求める観点からなされるものである。

出典:コミュニティ・スクール「教職員の任用に関する意見」について

学校も含めて理想的な人材を集めやすいのはコミュニティ・スクールの大きな特徴でしょう。

コミュニティ・スクールを地域主体で行った先に得られるもの

コミュニティスクールを継続することで最終的にどうなるかというと、地域活性化につながります。

なぜかというと、子供が育った先は必ず地域に属することになるからです。

もちろん引っ越しや、別な仕事についたりして、その地域に住まないこともありえますが、その子供達の実家はその地域になります。

また、全ての子どもが引っ越しをしたり、別な仕事につく人わけではありません。地域に残る子どもたちもたくさんいるのです。

最終的な地域人材となるのは今、学校に通う子どもたちなのです。

そうした時に地域が欲しいと思う人材と、学校が育てようと思っている人材の認識のズレがあった場合、地域の活性化から程遠くなってしまう

基礎学力や、社会のルール、人間同士のコミュニケーションだけではなく、その地域の良さを知ったり、この地域で何がしたいか、この地域で何が起こっていてどんな課題があるのか…。

このような課題に小さい頃から触れさせておくと、「何とかしたい」と思って育ってくる子供がいます

この地域の良さや、この地域の課題はその地域に住んでいる人しか分かりません。

そのために地域が主体になった方が良いという理由に繋がるのです。