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教員支援ネットワーク T-KNITのいがぐりです。

普段は私立の中高教員をしており、個人でもブログを書いております。

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みなさんは、5月9日に記者会見にて発表された大阪府の吉村知事の「素案」を確認されましたでしょうか?

内容は、「大阪における高等学校と公立大学の授業料無償化」の対象の所得制限を外すと言ったもの。

一見夢のような話で、教育に大変力を入れているようにも感じるこの素案。

さまざまなメディアでも取り上げられ、大きく評価されています。

しかし、そんな政策には私立学校を苦しめる大きな落とし穴があるのです。

今日は私立学校に働く一教員として、意見します。

💰助成金?私立学校?

そもそも国の公的資金で運用されている公立学校と比較して、私立学校はそのほとんどを自校で賄わなければならないために、非常に大きな金額を必要としています。

しかし、その資金を家庭からの校納金だけで準備しようとするなど到底無理な話です。

それほどまでに学校というのは莫大なお金を必要とします。

そこで、これまでずっと署名運動によって制度が拡充してきた私学助成という制度を用いて、ご家庭の年収によって助成金の幅を調整しながら、子どもたちの学ぶ機会を奪わないように発展してきたのです。

それと同時に私立学校自体にも、経営費補助として助成金が捻出されてきているのです。

東京都はこの私学助成の制度が非常に充実しており、公立と私立を選ぶ妨げにならないほどにまで整備されているのです。

運動のみでここまで制度が拡充してきたのは、歴史的にみても珍しいことであり、全国民が子どもたちの教育をいいものにしようという、根底にある志が創り上げてきたものでもあるのでしょう。

👏では、今回の授業料無償化は運動の結果なのでは!

確かに、今回の大阪府の素案はこの私学助成拡充の運動をしてきたからというのも一つあるでしょう。

その点で言えば、非常に大きな一歩です。

しかし、この大きな理想の成果に隠れてとんでもない事柄が隠れているのです。

この素案、「私学の教育条件の維持及び向上」に最も関わる「私学経常費助成(「私学助成金」における学校運営に対する補助。)について一切取り上げていません。

これだけであれば、「ああ、では学校の補助費は増額しないけれども、生徒の分は補填してくれるのね!」と思うかもしれませんが、違います。

今回の計画の大きな問題点の一つとしてキャップ制が適用されているところにあります。

このキャップ制は、たとえば、大阪府で「授業料の上限は60万円」と決定した際でも、今の学校の教育活動内容を授業料として「80万円」を徴収しないと実施できない場合、生徒か学校に足りない分の20万円を補填してもらう必要があるというものです。

つまり、生徒1人あたり20万円の差額分を学校自身が補填するか、1人20万円分の教育活動を削減していくことを「選択」しなければならなくなります。

この経営費補助は私学の収入の大きな部分を担っています。

キャップ制を適用されている中で、経営費補助について触れずにこの制度を押し通すのは非常に私学にとって厳しい状況になります。

👁‍🗨メディアに左右されないで

私学に働く身として声を大にして伝えたいのは、メディアに左右されないで欲しいという点です。

この政策は私立学校にとって、私立の独自性をなくしてしまう大きな要因になってしまうことでしょう。

しかし、そうだとしても、ある程度の揃ったところで公立も私立も競ったほうがいいという考えがあるのであれば、それはそれでいいと思うのです。

しかし、今日ここに書かせていただいた内容について知らないままに、ただただ、メディアの授業料無料化という言葉に煽られて賛否を述べるのだけはやめていただきたいと考えています。

何が子どもにとっていいものかどうかは分かりませんが、皆が表面的に見えるものだけでなく、深層部で教育について考える時間をもっととっていく必要があるのではと感じています。