今回はコミュニティ・スクールに関する質問がありましたので、お答えしていきます。
「コミュニティスクールの目的として目指すのは
グランドデザインを学校と共に考えるところから
ということで、合っていますか?」
この質問は40代の地域学校協働活動推進員の方からの質問です。
今年度からまたコミュニティ・スクールを設置した学校が増えたと思います。
しかし、一体どんなことから話し合っていったら良いか分からない!ということも多いと思います。
また、学校と地域の知識や、ペースに差がある状態でグランドデザインなど込み入った話をすると、信頼関係が崩れたりしがちです。
今回は活動の『グランドデザイン』について話していきたいと思います。
⭐ グランドデザインとは何か?
地域の方だとグランドデザインという言葉を聞いたことがないことも多いでしょう。学校では、グランドデザインという学校の方向性が示されている図があります。
一般的には
【学校教育目標】
↓
【本年度の重点目標】+【校訓】
↓
【目指す児童像】
↓
【目指す教員像】+【目指す学校像】
↓
【守るべき標語】
↓
【各努力事項】
※教育、生活など具体的な活動内容
などが一枚にまとめられています。
グランドデザインはどんな学校にも存在し、学校ホームページに掲載されているので、自分に関係のある学校の内容をぜひ見てみてください。
学校教育目標は基本的に市町村で出されている教育目標を参考に作られているので、ふわっと抽象的で、どこかで言われているような内容が書かれています。
どの学校でも書かれていることが特に多いのが知・徳・体ですね。
この単語を見るだけで「またこれか」と思う人もいるかもしれませんが、目指すべき内容としては間違っていませんし、「たしかに良いことだよな」と思う内容も多く含まれています。
⭐ グランドデザインの何が問題なのか?
では、良いことが書いてあるグランドデザインの何が問題なのか?
これは【保護者】も【教職員】もほとんど意識しないということです。
見たことがないという方も多いと思います。
基本的にグランドデザインは前年踏襲で作られています。歴史を重んじ、創立当初の想いを引き継いでいる分、簡単に変えにくいということもあります。
また、グランドデザインは3〜4月で一気に作られます。
特に校長先生が変わったタイミングで作られ、遅くとも5月には公表されるはずです。
例えば、グランドデザインで「生徒の主体的な選択と活動」が最も重要な点になっていて、保護者から「宿題が多いので減らしてほしい」という声が上がったとします。
この場合は「宿題は自分で考え、選択する」という点が確かに足りないかもしれないので、宿題ではなく、自学自習を宿題とする…ということを実施してもおかしくないですし、もしかしたら他にも選択、活動を促すことを行えるかもしれません。
しかし、この【宿題に関すること】は賛否両論になりがちで、答えが選びにくい問題です。
そうした時に指針として役立つのがグランドデザイン。
行おうとしている活動が「正しいのか?正しくないのか?」を判断するのがグランドデザインになりますが、浸透していないと選択が【個人判断】になります。
しかも、その目標は誰の目にも触れられることがないまま…ということが非常に多いのです。
目標のない活動は形骸化しがちで、【何のために】が抜け落ちていきます。
グランドデザインは在るだけではダメで、『いかに浸透させるか?』が本当に大切になってくるのです。
⭐ グランドデザインをコミュニティ・スクールとして考えるべきか?
さて、この点を踏まえて、学校運営協議会でグランドデザインの話をするべきか?というと、学校と地域のステージによって変わると思っています。
僕個人としてはグランドデザインを学校運営協議会で話しをすることは非常に良いことだと思っています。
これは学校運営協議会を突き詰めていくと、最終的にカリキュラムなど働き方改革に迫っていく形になっていく可能性もあるからです。
それは学校運営協議会の望ましい姿になっていると言えるでしょう。
しかし、それには学校と地域がフラットな関係になっていて、何でも話せる空気感と信頼が協議会にあるからこそです。
一般的に学校運営協議会が始まったばかりの時では、グランドデザインを考えることはほぼ不可能でしょう。そこまでオープンな校長先生は少なく、また一緒に考える時間もほとんどありません。
そして、地域としても、グランドデザインを考えるのは非常に重いと感じる人も少なくないはずです。何しろグランドデザインを見るのも、コミュニティ・スクールも初めて…という方ばかりなのですから仕方ないことです。
1年目からグランドデザインを全員で考えたり、大幅な改革をすることは難しいと思っておいたほうが良いでしょう。
⭐ 1年目はグランドデザインをどう捉えると良いか?
では、グランドデザインに関して何もしないのか?というと、そういうわけではありません。
必ず、グランドデザインや、年間計画など、校長が考えた計画が示されるはずです。
そこで気になる点は質問してみましょう。
『インクルーシブ教育とはどういうことですか?』と、分からない単語があったら聞いてみたり、
『小さなことでも褒めるとはどういう基準で褒めるのですか?私たちはどのように褒めると良いでしょう?』など、これってどんなタイミングでどのように?みたいな具体的なことを尋ねても良いと思います。
こうすることで、学校側の『そのようにした意図』が垣間見えてきます。
書かれていることは必ず意図があり、不明瞭な点があったら、そこから対話のキッカケが生まれてきます。
このように、最初のうちは校長先生が目指すグランドデザインの目的、ビジョンを共有するところを大切にして、進めていきましょう。
少なくとも地域は分からないことばかりなのですから、どんどん質問して、学校のことを理解していくということ、そして学校は協議会の中だけでも、地域が少しでも理解できるようにできる限り包み隠さず話していく努力をしてみましょう。