こんばんは。

教員支援ネットワーク T-KNITのいがぐりです。

普段は私立の中高教員をしており、個人でもブログを書いております。

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先日、驚きのニュースが流れてきました。

公立学校の教員残業代支給を検討

現在の教職調整額の制度を廃止して、残業代への支給に舵を切るというものです。

これについて皆さんはどのようにお考えでしょうか?

これは本当に大きな間違いを生み出してしまうニュースに感じます。

現在、教員の多くは公立私立含めて残業代が支給されない中で働いています。

これは、残業の定義が教員にとっては非常にあいまいなものになっているからです。

例えば、学校と言えば必ずあるような部活動。

この部活動も労働時間外に設定されているものですので、本来であれば残業代が支給されなければなりません。

その他にも宿泊型の体験学習や、時間外の会議など。

教職の世界には時間外での見えてこない労働が山ほどあるわけです。

当然、ここすべてに残業代を支給していては、財政的に間に合うはずがありません。

そこで公立校には教員調整手当や部活動手当といった、別の手当てという形で支給することで賄っている背景があるのです。

とはいっても、時給換算すれば最低賃金を割るような金額ですが、、、。

このさまざまな手当てを廃止して残業代が支給され始めることは、パッと聞いてみればいいようにも感じます。

しかし、実はこれは教員の全体の給与の減少につながってしまうのです。

これまで教員調整手当として支給されていた額と残業代の大きな違いは、その支払われる基準だけでなく、生涯年収にも大きく影響してくるのです。

例えば、教員調整手当をなくして残業代を設定します。そして、教育への費用も増額しますということであれば、少しは希望があるかもしれませんが、そんなことはありません。

母数は減らさずに残業代を導入するということはつまり、退職金の額を減らして総額としては公立教員への給与を減らしていくという方針を政府は取ろうとしていたわけです。

それに加えて、残業という設定にしてしまえば管理職からの命令がないと、残業としては換算されません。

どんなに仕事や教材研究が終わってなかろうとも、命令がなければ残業ではないのです。

これまでは、そういったこともなく支払われていた教員調整手当もカットされてしまうということも可能性としては十分にあるわけです。

一番悲しいのは、この制度を導入しようと政府が動き始めていることです。

これは、賃金を減らすという方向性だけではなく、そもそもの教員数を増やすつもりはないという意思表示にもつながるような気がします。

今回の記事では、「政府が検討」という表記をしていますが、文科大臣はこの制度を否定、おそらく公立の組合組織も反対する方向で動いていくことでしょう。

正しい知識を持っていないと一見、簡単に喜んでしまいそうな今回のニュース。

大学生の頃の私だったら、「教職もついに残業代を出してくれるのか、よかった~」と安どしてしまっていたかもしれません。

状況としては全く逆なのに。

これまで社会運動が盛んだったときには教職員組合も大きな力を持っていたと先輩たちからはよく聞きます。

生活の水準が安定している今でも、労働者としての自覚をもって働くというのは非常に重要なことになって来るでしょう。