小さな積み重ねが人の人生を充実させる

価値のある教員人生とは?
ー薄井先生の主観でかまわないのですが、学校の先生にとって、価値のある幸せな人生ってなんだと思いますか?

自分としては、人の人生を充実させていくっていう裏方に回ることですね。極端な話、人の人生を預かっているので。

子供たちが10年後20年後に教員になりたいという子もいます。

はっきりとこうなりたいという夢があって、それに対して「こうすればいいよ」という自分のアドバイスが生きて、子供たちが「そうしてみよう」とかなりますよね。

 

小さいことでいうと授業中に「こうすればいいよ」といって問題が解けるようになったとか、そういった積み重ねが人の人生を充実させていくっていう裏方に回る喜びっていうんでしょうかね。

それはすごく感じています。

ーなるほど。では今の質問は未来のことでしたが、今大事にしていることってなんですか?

今、大事にしているのは課題の設定という部分です。

自分自身が、子供たちのやらなくてはいけないことをはっきり意識させなくてはいけないんだなぁというのが難しいし、また楽しいなと思うところです。

授業でも、例えば「今日はこういう授業をやりましょう」、「タブレット使っていいですよ」、「最後に発表してみましょう」と言った時に、その課題が子供たちにとってストンと入りやすくわかりやすい課題であったら、「じゃあやってみよう」とまっすぐ進んでくれるんです。

「一時間でこんなに成長するんだ!」、「こんな発表できるんだ!」っていうくらいに進むんです。

 

でも、それをこちらが下手にあれこれ言ってしまうと、クラス全員の方向が違う方に向いてしまって、話し合っているようで口喧嘩になっていたりとか。

「先生はこう言ってたよ!」「いや、こういう意味だよ!」とかお互い理解していないから話がぶれていて、いざ発表するときにも話が全然煮詰まってなかったりとか、まとまってなかったりというのが出てきてしまうので…

ちゃんと、今日はこの時間で“子供たちにこの力をつける!”というのをきちんと自分の中で決めるということをしないと、授業って難しいんだなと思います。

 

子供って一生懸命なので、やっているけれどもテーマから暴走してしまうこともあるんです。

そうなるとせっかく一生懸命でも評価ができないということになるので、自分がきちんとテーマを持たないと大変ですね。

ミッションみたいなもので、ゴールはここですよというのを決める。

好きな道通ってもいいけど、ルールはきちんとあって、テーマやルールがしっかりしていないと話し合いが充実しないので、そこを気をつけないといけないなと思っています。

自分がゴールで待っていられるような形ですね。

ー今後やってみたい授業はありますか?

やってみたい授業は、もし、なんでも揃っているとしたら自分たちを全身センサーだらけにしてしまって、ホログラムを使って人体模型がバン!と出てきたり、実物でもいいんですけど(笑)。

セッティングする時間がもったいないので、自分の体の動きで黒板が変化するとか。

 

自分にプロジェクションマッピングを映すとか、机の上に映すとか、はっきりと操作していなくても自分の向きで魔法使いみたいにヒントをだしたりとか、できたら楽しいですね。

子供が「テクノロジーってすごいな」って思ってくれるような授業も面白いかなと。

ICTは道具の一つ。「情熱」が教師としての自分を形づくっている。

ICTも道具の一つ。ノート、黒板、定規と同じ。
ーそういえば、以前Facebookに書き込みあったじゃないですか。『薄井先生からICT取ったら何が残るの?』って。

あぁ、ありましたね。

ー何が残ると思いますか?

うーん、別に難しい問題じゃないですね。

ICT取っても『薄井直之』にちょっと乗っかってるだけなので。道具の一つですから。

 

普段やってる学級経営とか、子供と毎日話してますよとか、授業づくりは先程言ったように課題をしっかり持ってやりたいなぁとか、丸つけしっかりしてあげたいなという情熱ですよね。

今、頑張ってる熱意とか、仕事に対するプロ意識のところでICTはきっかけでしかないですね。

だからICTを引いたところで別になくても構わないですよという部分と、あると便利かなというくらいです。

ー例えば考え方は、校長によって変わるじゃないですか。「うちはICTやらないよ」というところとか。例えばそういったところに行っても今までどおりに授業ができますか?

まぁ…、そうですね。

授業はできるけど、逆に授業を作るのに時間がかかってしまうかもしれないです。

 

今はICT使ってすごく便利だというのがでてきたので…。

昔は3階の職員室から降りてきて、また戻って、「あれ、紙のサイズが合わない」とか「文字が潰れちゃった」とか、「色の部分の面積を求めましょうの色の部分がわからない」とかあって、印刷し直すので大変だったんです。

今は全部タブレットを使うとカラーで、しかも印刷しないで配れたりするので。

その便利さを知ってしまったので、戻れないといえば戻れないですね。何か違う工夫を考えないといけないです。

白黒で授業をどう作るのかと、タブレットでどう授業を作るのかって方向性は違うけど、やりやすい授業につながるという意味ではやっていることは変わらないですよね。

成功の裏の努力に目を向けさせる

成功をするためには歩き続けなければならない
ー薄井先生って、どのぐらいの年代の子供を担当しているんですか?

ここ4年は6年生の担任ばっかりですね。

ー6年生の子供たちの印象ってどんな感じですか?

うちの学校は素直な子が多いので、傍から見たら幼く感じちゃうかな。

意外に自分の事分かっているようで分かっていない。

 

だから勝手に「自分は算数苦手だからもうやらない」とか思っちゃってるような子が、思ってるだけで、やってみたら意外と解けたとか。

知識とか経験が足りないのは子供だからしょうがないんですけど、その割にテレビとかYouTubeとかネットでちょっとレベルの高いものを見てしまって、意外と自信のない子が多いんです。

今の子はそういったネットの影響を強く受けているなぁというのはあります。

 

同じ年代でこんなにできているとか、あとは世間を知らない年齢なのにネットで世界を知ったつもりになっているので、簡単そうに見えてしまって、その結果「YouTuberになりたい」とか出てくるのかなぁと思いますね。

YouTuberって裏ではすごく努力していますよね。

取材して、編集の構成を考えて、なんだったら弁護士をつけて訴訟対策をしたりしている状態でやっているのに、そこは表には出していない。

表に出していない部分を子供たちは想像できないので、楽しそうにやっているだけでお金稼いでいる仕事だって思ってしまう。

そこもきちんと意識させようというのは力を入れているところです。

ー薄井先生が体験したことでもいいんですが、子供たちが今一番大変なことってなんですか?

うーん、うちのクラスの子は勉強苦手なんです。

“苦手だったらやりたくない”という気持ちと、“苦手だからやらなくちゃいけない”という気持ちがあって、その割には逃げ道がたくさんあるんですよ。

外では遊んでいないけど家の中ではゲームもあるし、YouTubeもあるし、真剣に物事に取り組めない自分っていうんですかね。

そういう子が今年は何人かいるんですよ。

 

6年生になると、市内の外の子との交流が結構あるんです。

陸上記録会とか、市内の全6年生が集まって、こういう人もいるんだなという中で「自分は意外に低いんじゃないか」とか…、「いや、自分が上なんじゃないか」と競いあうんですけど、意外に自分のこと知らないので、そこで人のいいところと比べてしまったり。

意外に今の子供たちって、自分と真剣に向き合ってくれる人が少ないのかもしれないです。

先生たちもあまりきつく言い過ぎると言葉でも体罰扱いになってしまうので、やんわり言う。

でも、実際社会にでると結構キツく言われますよね。

ーそうですね。

学年が上がるにつれて求められるレベルって更に上がってくるんです。

「え?これって○年生でやってることだよ」って言われてしまうんですよ。

 

そうすると、落ち込んでしまうんです。

今までガツンと熱く言う人が少ないと、どうやっていいのか分からないってなってしまうんですよね。

分からないから、とりあえずネットで調べてみようとか。

 

そうではなくて、ガツンと言われて「やってみろよ」と言われたらまず「やってみよう!」で実際やってみたら「出来た」、「嬉しいな」って。

やってみた体験というのが足りないのは今の子に感じるので、結果的に色んな面で悩みに繋がるかもしれないです。

「今まで勉強しておけばよかった…」とあとで気づく子が多いんですよ。

 

じゃあ今やっているのかというと、やっていないんです。「やれ」って言う人が少ないし、今までに言ってくれた人もいないし。

逃げようと思えばいくらでも逃げられちゃう。

そこをしっかり向き合ってくれる人が多いほうがいいかなと思います。

 

向き合うとやっぱり熱くなってしまうので、そこは難しいんですけど。

逃げる経験しかないんですよね。

ー薄井先生が子供たちを見てきた中で、今までで一番喜んでいたことってなんですか?

新しいものを見る、知るというのが一番刺激になっていて。

郊外学習で、国会議事堂とか日本科学未来館とかの施設を回るんです。

そこで、チームラボという会社のテクノロジーの最先端技術を見たりとか、プログラミングしてあるおもちゃを見たりとか、新しい技術を見て圧倒されつつも楽しい。

 

それでそこに算数も関わってくるし、勉強した結果がこれなんだというのが分かって「じゃあこれやってみようかな」と意欲に繋がるんです。

あとはiPadの導入も、これで授業をやるとわかりやすい!という時の目の輝きとか。

最新テクノロジーに限らなくても、新しいものを知ったときとかは本当に嬉しそうですよね。

愛情をもって子供たちの「逃げ」をぶった切る

iPadを使ったテクニック
ー自信を持って、これはもう最高に子供の学びに繋がったというエピソードはありますか?

タブレットを使ってからの話なんですが、やはり途中からテクニックに行ってしまうんです。

タブレットを使って自分の考えをわかりやすく伝えよう、とグラフを出したりイメージ図を出したりとかテキストでうまく誘導していこうと思っていたのに、途中から画像加工に走って面白いの作ってみましたとか。

ー本来の目的から外れてしまったんですね(笑)。

そう、本来の目的と違う方に向かっていってしまったんです。

だから、本人たちは満足しているけど、それを全部ぶった切ったんです(笑)。

 

「全然おもしろくない」とか「何を伝えたいのかわからない」とか。

信頼関係ができているからこそなんですが、全員ダメ出しして、やり直しさせたんです。

 

「ここがだめだ」とか「こうすればいいんじゃないか?」とかそういったことは伝えてあとは投げたんですよ。

すると、友達同士で確認しだしたんですね。

今までは一人で自信満々に作っていたのが、お互いに確認する時間が取れるようになって刺激しあって。

 

同じ内容で発表させると流石にレベルが上がっているんですよ。

無駄が全部削ぎ落としてあって、伝えるということに全部意識が向いたので。

一回ダメになって、それを友達と協力して乗り越えていくんだなぁと感じたことがありました。

それがあって、2月にICTフォーラムをやった時の子供たちの発表も上手になったのかなと思います。

 

この事がなかったら、たぶん発表に真剣に取り組むところまでいけなかった。

こうやらなくてはいけない!という意識を持てたので、それくらい強く叩き切る位のエピーソードがあったのは良かったのかなと思います。

ー今の学校環境で変わってほしい所はありますか?

先生って学校所属になるんですよね。

「他校で実施された授業で使ったアレをうちの学校でも使いたい」となって電話なり、訪問なりすると「なんだあいつくるのかよ」みたいな雰囲気が絶対あるんです。

もっと自由に学校間で連絡を取って、内容を見てみたりとかというのをやりたいなぁと思っています。

 

あとは簡単に教員が集まって情報交換したりできるような場所とか機会があるといいですね。

タブレットとかうちは一人一台ですが、40台しかないというところもあったりして、そういうところも見てみたいんですよ。

グループ一台となった時のイメージがつかないので、どうやって授業をやっているのかとか分からないので。

逆に一人一台って贅沢なので、他の学校からしたら見に行きたいわけですよ。

学校間で自由に行き来できれば、「ここにしまってるんだ」とか「こういう掲示物使ってるんだ」とか気軽に情報交換できたらいいなと思います。

教員志望の方へ伝えたいこと

子供たちから祝われている薄井直之先生
ー教員志望の人たちに伝えたいことは?

本当に楽しいよ、という一言です。

こんなに楽しいことはない。

 

演技をしたかったら授業中に真似て喋ってもいいし、面白い授業を思いついて実行したらダイレクトに反応が返ってくる。

4月に掲げた学級目標がここ最近定着してきて、それによって活動の幅が広がってきたりとか…、常に成長する子供という人間の近くにいるので、こんなに楽しいことはないですね。

 

責任感って考えると難しいとは思うんですけど、そこは狙いを持って子供たちと向きあっていけば絶対答えは返ってくるんです。

間違ったことを言ってしまったとしても、自分で考えて次はこうしよう、ああしようという繰り返しなので、単調な毎日じゃないというのはすごく楽しいです。

 

昨日までこだわっていたこととか切り替えられちゃうので、面白いですね。

4年連続6年生やってても、子供は全然違います。

子供の得意不得意で授業も変わっていくし、変えなくてはいけないという難しさもあるし、その「変える」ということがいいことで、ずっと単調にやっていくと絶対息切れしてしまう。

 

「自分はこんなに一生懸命やっているのに子供に伝わらない!」という風になってしまうけど、そこを自分の一工夫で、言い方を変えたら伝わったとか、プリントを作ってみたら子供たちが一生懸命に取り組んでくれたとか…。

ちょっとした変化で劇的に変わっていくので、大変だけれどもその変化を楽しめるという事が一番魅力かなと思います。

固いイメージはありますけど意外にそうでもないので(笑

まとめ

ICTは先生にとって道具の一つであり,きっかけである。

薄井先生はICTエバンジェリストとしての活動を通して,ICTの活用が子供たちの「学び合い」の創出に繋がっていることを実感していました。

 

また、エバンジェリスト間で情報を共有することや職員研修を工夫することなどの重要性についても語っていただきました。

薄井先生の取り組みがこれから多くの先生たちの「きっかけづくり」につながると良いですね!

今回の記事に対して、ご協力いただいた薄井先生、古河市上大野小学校さま、ありがとうございました。

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