私が勤めている日本人学校ではコロナの影響により1年以上ずっとオンライン授業を実施しました。
本校は児童生徒すべて合わせて20人という大変小規模の学校です。
4月当初から先生方と協力して作ったオンライン授業実践を紹介します。

オンライン授業を実施する上での課題点

オンライン授業を実践するにあたりいくつか課題が出てきました。

システム的な課題

まず私が勤めている国はインフレの整備が整っておらずネット環境がとても悪いという問題がありました。

有線にすれば100Mbpsはいくのですが、Wi-Fiにすると10Mbps程度というような状況でした。

そのため、ZOOMやGoogleクラスルームを使用して授業をしているのですが、途中で止まってしまうという問題点が出てきました。

次に一人一人端末が違うという点です。

学校で一人一台の端末を用意することができず、各家庭にある端末で授業を実施する形になりました。

そのため、ipadやMacBook、WindowsPCで授業を受けたりと様々な端末であったため、ICT機器の説明も子どもに合わせて行う必要がありました。

最後に家庭でZOOMの授業をしなければ行けない点です。

児童生徒も教員も学校に行けないので家庭からZOOMをつないで授業をすることになります。

そのため、生活音や子どもたちの声が授業中入ってしまいます。

我が家では小さい子供が3人いるので子どもたちが授業中妨害するということも多々ありました。

そこは授業スタート時に各家庭に了承を得て授業を実施させてもらいました。

健康的な課題

コロナの影響で外出禁止令が出ている中授業をしていたので教員も生徒も体に負担が生じていました。

1日中家にいるだけでも辛い中、授業をしなければならないという状況は児童生徒も保護者も教員も大変でした。

そのため、1日の時間割はどうするのか、健康状態を考えながら時間割を組みました。

また、日本にいてこちらに来ることができない先生方は深夜や早朝に日本から授業を実施してくれていました。

そのため、日本にいる先生方の生活リズムの問題もありました。

学力保障の課題

オンラインのみで学力を身に付けるためにはどのようにすればよいか試行錯誤しました。

いままでの常識に囚われず、新しい発想で授業をしていくことになりました。

時間割の問題や時数の問題もありましたが、何を優先すべきか考える機会となりました。

授業を実践していくなかでも課題はありました。

ZOOMを使った対面式の授業であるので児童生徒の顔はみれますが、学習の実施状況等はみることができず、複数人を対応している学年はできない生徒が出てきてしまったのが現状でした。

オンライン授業の取り組み方

本校の授業実践状況は学期ごとに主に変わりました。

1学期は教員も児童生徒も初めての試みでしたので試行錯誤して授業構築していきました。

1学期実践した授業

ZOOM、Googleクラスルーム、eboardの3つを使って授業をしていました。

  1. ZOOMをつないで課題の指示をする
  2. Googleクラスルームで課題を提示
  3. eboardで復習教材を実践してもらう

以上3つの方法で取り組んでいました。

イメージはこんな感じです。

ZOOMも最初の10分で課題の説明、次の30分でZOOMを切って個人作業、最後の10分で課題の確認という流れにしました。

こうすることにより、パソコンの画面から離れる時間を意図的に作るようにしていました。

時間割も主要教科に重点を置くということで小学生は算数、国語、中学生は5教科の授業のみ実践しました。

ただしこれは5月くらいにはコロナの影響が収まると予想しての対応でした。実際は現在まで続いているのでこの時間割でいくのも1学期までとなりました。またオンラインでの実施のため、成績の付け方等も議論し、1学期は初見のみの成績ということで統一することとしました。

2学期実践した授業

まだオンライン授業を実施するということで時間割を変更し、技能教科も入れていくこととしました。

中学生の時間割はこんな感じで組みました。

まだ2学期のスタートは日本で待機していてこちらに来ることができない先生が2人いたのでその先生たちは深夜や早朝に授業をしてこちらの時間に合わせてくれていました。

そのため、社会が飛び出ているという特殊な時間割になっています。

また、自習室等のは担当教員はつくものの自由に入ってもよいという時間帯となります。

児童生徒はそこで自主的に学習をしていくという時間になります。

2学期からは1学期のように最初の10分で課題の説明等の縛りはなくなり、通常の授業と同じ用にZOOM

をずっとつけたまま授業を実践していくという形を取るようになりました。最終的に2学期の最後までこ

の時間割で授業を実践する形となりました。

オンライン授業を実施する流れ

一日のスケジュール

7時30分〜        職員打ち合わせ

8時00分〜8時10分   朝の会

8時10分〜8時50分   1時間目

9時10分〜9時50分   2時間目

10時20分〜11時00分 3時間目

11時20分〜12時00分 4時間目

12時00分〜13時00分 お昼休憩

13時00分〜13時50分 5時間目

14時00分〜14時50分 6時間目

14時50分〜15時00分 帰りの会

上記のようなスケジュールで一日を過ごしています。

教材準備等はこの中の空き時間等で済ませるような形にしていますので実質の労働時間は学校に行っている

ときより遥かに少なくすみました。

私の場合は帰りの会の後は近くの公園で自分の子供達と遊んで過ごしていました。

オンライン授業で活用したツール

①Googleクラスルームの活用(課題の配布や提出)※必須

Googleクラスルームを使用して自分が担当するクラスをこのような形で作成しました。

授業で使用する教材等はこちらの中に入れて児童生徒と共有して使うことにしました。

それぞれのクラスルームの中は右図のような感じで整理しています。

②ZOOMの機能の活用 ※必須

ギャラリービューで生徒の顔を見ながら実施

基本的な授業は全てZOOMを活用して児童生徒の顔を見ながら実施します。


事前に児童生徒に時間割とそれぞれの教師のZOOM IDを送って授業に入ってもらいます。ZOOMに入ってき

てからは通常の授業と同様に児童生徒へ指示をしていきます。児童生徒の実態にもよりますが、高学年の児

童生徒はZOOM既存のホワイトボードを機能を使って自分の考えを説明したり、JamboardやGoogleスライ

ドを使用して共同作業をしたりしています。

ブレイクアウトルームの活用

本校では有料版ZOOMを使用しています。有料版ZOOMには素敵な機能がたくさんついています。

まずは「ブレイクアウトルーム」これはグループワークをさせたいときに活用することができます。本校では

週に1度全校で合同レクがありましたが、そこでチームで協力しての対戦等で活用することができました。

次に「投票」授業の最中に児童生徒の意見を知りたいときに使うことができます。道徳の授業の際に各自の

意見を聞き、ディベートする際に使いました。他にも授業の際の導入としても使えるのではないかと思いま

す。

③Jamboardの活用

JamboardはGoogleが提供してくれているホワイトボードアプリになります。このアプリのすごいところは

ホワイトボードを共有してリアルタイムに同時に書き込みができる点です。

また、自分が記録したところはそのままデータとして残るので児童生徒もノートがいらなくなります。

写真等のデータもすぐに掲載することができるので自分だけのノートを作ることもできます。

④Googleスライドの活用

Google スライドの素晴らしいところは共同で作業をすることができるというところです。 授業をしながら

一緒にスライドを作ったり、児童生徒にスライドを作ってもらいその修正等もすぐにしたりすることもでき

ます。私の勤務校では総合学習のスライドも児童生徒一人ひとりに作ってもらいましたが、グーグルクラスル

ームの中に各個人の名前を入れ、その中に Google スライドを作ってもらいました。このようにするとどの

先生でも各個人のグーグルスライドを確認することができ、修正作業がスムーズにできます

⑤Googleアースの活用

⑤Googleアースの活用

4年生の算数の大きな面積を求めようという授業でGoogleアースの中に入っているメジャー機能を使い実際

に長さや面積を計測してみました。学校と比べることや街と比べることができるので児童も理解することが

できました。

⑥Googleスプレッドシートの活用

Googleスプレットシートに予め教科書通りの図形を作っておきます。作ったものを実際に移動して形を考え

る際に使用すると児童の思考も整理されて思考力が増しました。

⑦Googleサイトの活用

単元ごとに授業で実施したことをサイトにまとめました。このようにすることで後日児童生徒が振り返りの

ときに役立ちます。

今回はGoogleスライドで作成したものを一覧でまとめて表示してあります。Googleサイト以外でも自分が必

要だと思った教材を入れることができるのでとても便利です。オリジナルの復習教材を無料で作ることがで

きます。

一つ作成すればいろいろな児童生徒に提供できます。授業に休んでしまった児童生徒はもちろんのこと、学

校に来ることができない不登校の児童にも学習する機会を与えることができます。

⑧Googleフォームの活用

児童生徒へのテストを出題することとして使用することができるGoogleフォームですが、私はあえて児童生

徒に他の生徒向けのテストをGoogleフォーム作ってもらうことにしました。相手のことを考えてテストを作

ることで必要な情報を入手しなければいけないので学習の質が向上することを狙いとしました。まずはNHK 

for schoolや教科書で必要な情報を入手した後にGoogleフォームで問題を作成していきます。

オンライン授業を振り返って

教職員、児童生徒のICT機器の使用レベルの向上

8ヶ月間毎日ICT機器に触れることにより、教職員、児童生徒ともにICT機器の扱いが上達しました。小学校1

年生の児童は今では自分でクラスルームに入ることや印刷すること、ZOOMをやっている最中にチャットへ

の書き込みまでもできるようになりました。中学生はGoogleスライドの作成、簡単なホームページ作成、動

画編集等高度な技能も習得することができました。

学力の定着

少人数ということもあるかと思いますが、オンラインではオフラインで見えなかったことがよく見えるよう

になりました。

授業でJamboardというアプリを使うことで児童生徒が実際に活動している様子をリアルタイムで見ることが

できるようになりました。リアルタイムで確認できるため、その場にあったアドバイスをすることができま

す。また、授業中わからないことがある場合は積極的に自分たちでインターネットで調べる姿が見られまし

た。そのため、自主的に学習をすすめることもできるようになり、オフラインのときよりも学力が定着した

と思います。

教職員の団結力の向上

毎朝のZOOM会議やチャットでのやり取りを頻繁にすることで気になることが少しでもあればすぐに聞くこ

とができる環境となった。本校ではGoogleが提供しているチャットを使用しているのですが、部会ごとグル

ープをつくりその中でやり取りすることができています。ですのでいままでは相手の都合を考えて、相談して

いたこともチャットで気軽に相談することができるようになりました。また、G Suite for Education を使

用することで情報の整理、共有がスムーズになり、仕事もはかどりました。

自分自身のレベルが上がる

オンライン授業を振り返ってみると最初は戸惑うことばかりでしたが、あらためて考えると全てが学びであ

ったと感じます。どんな場面でもできることを探し、追求していけば必ず自分自身の力になると思いまし

た。本校では3学期から学校が再開する予定です。学校再開後は今まで培ってきたオンラインに加え、オフラ

インの良さも取り入れることができるのでオンラインとオフラインのハイブリットの授業を組み立てていき

たいと思います。