部活動問題、定時に帰れない問題、複業禁止などなど…。

そんな中、今、学校は新しい制度や、システムが次々作られ、見直しされることもなく、組み込まれて動けなくなってしまい教員ブラックと騒がれている時代になっています。

しかし、いろんな方が働き方改革を謳ってはいてもなかなか形になっていません。それは一体なぜなのか知っていますか?

今回は現役教師を続けながら、新しいチャレンジを続けている江澤隆輔先生に教員の働き方改革がなぜ進まないのか?についてを詳しく、本音で語っていただきました。

3児の父。福井県坂井市生まれ。
江澤隆輔

広島大学教育学部(英語)卒業後、福井市灯明寺中学校、あわら市金津中学校を江東小学校を経て現職。

金津中学校勤務時には、英語科一体となって、独自に1年生へフォニックス導入、多くのパフォーマンステスト設定、3年間を見通した英作文問題集を作成。

その取り組み成果が外部検定試験GTECの結果に現れ、『VIEW21教育委員会版 臨時増刊号 英語4技能育成特集号』(2017年6月発刊)に取り上げられた。

教師の働き方改革についても発信をし、現在は現役教師Youtuberとしても活動中。

\ブログを読むんじゃなくて聞きたい!生のインタビューを見たい!という方はこちら/

教員の働き方改革はなぜ進まないのか?

ソルティー
ソルティー

江澤先生、今回はよろしくお願いします!

江澤先生
江澤先生

はい!よろしくお願いします。

ソルティー
ソルティー

早速ですが、「教員は今こそ働き方を改革しようよ!」っていう人増えたと思うんです。増えたと思うけど、頑張っている先生たちがいる中で大多数の先生たちはあんまり動いてない…って気がするんですよ。

じゃあ、なんでこんなに動き出せないのかって理由を知りたいです。

江澤先生
江澤先生

うーん…。確かにそれはありますね。それは…思いつくだけでもたくさんあるんです。
まぁ、その中でも3つくらいに分けるとすると…。

最初に必ず負担があって働き方改革ができる

江澤先生
江澤先生

いつもこれは講演とかセミナーで言うんですけど、なんか一つ、大きな仕事があったとして、横軸が時間、縦の軸が負担だったとします。

なんにもしなかったらずーっとほぼ同じ負担ですよね。

ほぼ横ばい。負担は増えることもないがほとんど減ることもない。
ソルティー
ソルティー

そうですね。何年経ってもほとんど変わらないです。

江澤先生
江澤先生

この仕事を一定水準以下にしようってのが働き方の精選じゃないですか、行事とか、仕事の精選ね。減らすとか、なくすっていう。

でも、この学校の仕事とか、行事とか負担を減らそうと思ったら、一回負担が大きく増えるんですよ。分かります?

一回大きな負担があり、この山を覚悟しなければならない
何かを捨てる、削るというエネルギーが最初にかかる。これが大きな負担になってしまう。
ソルティー
ソルティー

何かを捨てるには何かを始めるのと同じことだから負担がかかるんですね…。

江澤先生
江澤先生

そう、一回山があって、それから減るんですよ。

なんでか?っていうと、この仕事を減らしますっていう提案をしたり、この同意をもらうのにたくさんの先生方に根回ししたり、もしかすると地域の人たちとも協議しなきゃいけないかもしれないし…。

コレ(山)がかなりの負担になるんですよ。

ソルティー
ソルティー

その大きな負担を超えたら?

江澤先生
江澤先生

うん、「おっしゃー、オッケー!」ってなって減っていきます。

でもね、先生たちって大体7年とかで異動するでしょ。下手したら校務分掌とか1年で変わるんですよね。

ソルティー
ソルティー

うわぁ…。

江澤先生
江澤先生

「1年で変わるの分かってて大きな負担かけて働き方改革やりますか?」って言われたらどうですか?やりたいですか?

ソルティー
ソルティー

うーん、徒労に終わりそうな気がしますね…。

江澤先生
江澤先生

やらないでしょ?(笑)だって、それやらなかったらいつも通りで済むんですから(笑)

やろうと思ったらコレ(山)なんですから。さらに減らそうと思ったら自分が割を食うというか。

ソルティー
ソルティー

たしかにそうですね。甘んじて受ける先生はすごく多そう…。

江澤先生
江澤先生

将来5年後、10年後はそこに辿り着いているかもしれないんですよ。
でも、「俺が今それやったら山が大変だよな」っていう。それが一つありますね。

で、しかも。

ソルティー
ソルティー

まだあんのw

江澤先生
江澤先生

この決断をするのは最終的には校長ですよね。それをしていいかどうかって。
で、校長って大体2年か3年で変わりますよね?

ソルティー
ソルティー

そうですね。

江澤先生
江澤先生

教員がなかなか改革に動き出せない理由に学校の先生独自の構造的な話と、校長の退職の話が絡んでくる

これはかなり大きい。

ソルティー
ソルティー

本気でやるなら働き方改革は構造から見直さないとダメですね…。

中途半端な改革じゃ何も変わらない。10分の10の賛成が必要になる

江澤先生
江澤先生

もう一つが教員の長時間労働ってすごく今問題になってますよね?

ソルティー
ソルティー

そうですね。

江澤先生
江澤先生

割と僕の自治体では朝、20分間、朝読書の時間ってあるんですよ。これは全国的にどうなのかって分からないんですけど、朝の20分って週で100分、一ヶ月だと大体400分あるんですよね。

400分ってことは7時間くらいかな。

ソルティー
ソルティー

結構な時間になりますねぇ。

江澤先生
江澤先生

その7時間をもし、教育委員会の大御所みたいなメンバーが他に9人いて、一人の先生が「それ必要ないんじゃない?」って言ったとしたらどうなると思います?

ソルティー
ソルティー

うーん、「ダメ!」とか?

江澤先生
江澤先生

そんな簡単じゃないんですよね(笑)

残りの9人のうち、8人が「あ、いいね。減らそうか」って言ったとしても、残りの1人が「いやいや、読書大事でしょ」「最近、本を読まない子増えてるから学校でくらい読ましてあげようよ」って言ったらどっちが通るかって、実は1人の意見なんですよね(苦笑)

オセロでドーン!
今まで白圧勝だったのに一気に黒く染まってしまい何も手が打てなくなるのに近い。
ソルティー
ソルティー

ヒェ…。オセロでいきなりひっくり返された感じ…。

江澤先生
江澤先生

それなんでか?っていうと、学校の先生って真面目だし、子供たちのためにいろいろやってあげたいっていう気質があるんですよ。

1人の先生が「いやいや、子供たちのためにやりましょうよ!」って言ったら、残りの9人の人が「いやー、そんなにやりたくねーなー」って思ってても同意せざるを得ない

ソルティー
ソルティー

ダメだと思ってても引き受けちゃうんですね…。

江澤先生
江澤先生

減らそう、無くそうと思ったら10分の10じゃないといけない。これが今、僕の勤めているような大規模の学校だったら、50分の50じゃないといけないんですよ。

ソルティー
ソルティー

大変だこれ(笑)

江澤先生
江澤先生

分かります?

で、さらに!

ソルティー
ソルティー

もうやめてあげて!先生のライフは0よ!!

一つにまとまることがないのはみんな◯◯があるから

江澤先生
江澤先生

実はさっき言った通り教育活動って色んな考え方とか色んな答えがあるから、一つにまとまるってことはほとんどないんですよ。

ソルティー
ソルティー

なるほど…。

江澤先生
江澤先生

例えば合唱コンクールを減らそうってなった時に音楽の先生がそれ同意するか?っていう話なんですよ。

だから、それで音楽の教員が「いやいや、歌大事でしょ。みんなで一つになってクラスでまとまってやろうよ!」って言ったら、他の49人が「いや、止めようぜ」ってなってても同意せざるを得ないんですよね。

ソルティー
ソルティー

やっぱりそうだよね〜みたいな空気になっちゃうんですね…。

江澤先生
江澤先生

そこを覆…せないと思う。誰もできないと思う。働き方改革はもっと別のところでやる必要があるんです。

教員の働き方改革が進まない理由と地域は関わりがあるのか?

ソルティー
ソルティー

外部とか地域との連携した授業って江澤先生やるんですか?

江澤先生
江澤先生

全然。個人的にはやったことないですね。学年とかではやったことあるけど。

ソルティー
ソルティー

僕の専門って地域学校協働で、地域で子供を育てていくコミュニティ・スクールで動いていたりするんですよね。

学校にボランティアを派遣したりとか、地域のすごい専門家みたいな人を授業にティームティーチングで入ってもらったりとか。こんな人いませんか?ってことを連携しあったりしているんです。

江澤先生
江澤先生

外部かぁ〜。やってないなぁ。

ソルティー
ソルティー

逆に入れない理由ってあるんですか?

江澤先生
江澤先生

いや、別にないですね。小学校とかすごい相性良いと思いますよ。
単発でポンポンっと来るタイプじゃなくて、毎日来てくれるみたいな。

ソルティー
ソルティー

ふむふむ。

江澤先生
江澤先生

違う人でも良いですけど、例えば給食。

給食の時間、30分くらい担任の代わりに地域のおばちゃんが来るって。
そういうのってすげー良いと思う。その時間は担任の先生、休憩みたいな。

ソルティー
ソルティー

たしかに。先生って給食の時間、なんか丸付けしてるんですよね。

江澤先生
江澤先生

そうそう。ただ、その時間、地域のおばちゃん来て「ちゃんと箸持ちな!」ってめっちゃ良くないですか?

昼休みに大学生のお兄ちゃん、お姉ちゃんが来てくれて遊んだりすると先生らの休憩になって良いかなぁとも思ったり。どんどん入ってきてくれて良いと思います。

でも、教頭先生がマネジメントすごい大変…でしょうね。

ソルティー
ソルティー

そうですね。今、教務主任の先生と連携してやらせてもらってますが、いちいち教務主任の方に聞いてから動くので、対応しているという事実は負担っちゃ負担でしょうね。

江澤先生
江澤先生

それは負担ですねぇ…。

ソルティー
ソルティー

逆に「ボランティア見つけてください」っていうのは結構あります。僕が見つけてくるんです。

普通、ボランティアって表に立って探してきますっていうのが教頭や、教務主任になっちゃうので、めちゃめちゃ負担って言ってましたね。

教育委員会通してちゃんと仕組みができあがっていればこんな問題起こらないんでしょうが…。

江澤先生
江澤先生

そこを「なんとか負担減らそう」と思ってて、実は負担増えてたみたいなところはちょっとあったら辛いですね。

ソルティー
ソルティー

周りの先生は(間接的に)減ってるんですけど、その連携する先生だけ増えちゃう。

なるべく担いたいと思って僕もコーディネーターも買って出てるんですけど、どうしても学校との行事の連携とかあるので、予算が降りれば都度都度行きますよってできるなーと思うんですよ。

ボランティア範囲だとどうしてもそこを連携するしかないっていうのがちょっと悩みだなと。

江澤先生
江澤先生

そういう外部の方は中学校も入れたいですね。やっぱり。

ソルティー
ソルティー

地域にはいろんな先生(専門家)いますからね。まぁ、学習指導要領に沿っているかどうかってあると思うんですけど…。

英語得意な人もいるし、道徳得意な人もいるし、問いを作るのも得意な人もいるし、お金を作るのが得意な人もいるし。それぞれの専門家を呼んでくるのは面白いなと思います。

江澤先生
江澤先生

職場体験とかありますよね。職場体験の事前指導でスペシャリストの話を聞こう!みたいな。そういうのはやってるところ多いと思いますね。

ソルティー
ソルティー

今だとオンライン化もでき始めたからやりやすいかもしれないですね。

教員の働き方改革と子供が「将来何がしたいか分からない」問題について

ソルティー
ソルティー

今、将来何がしたいか分からないって子が多いと思ってるんです。

高校生になっても見つからないし、大学生になっても何となく大学に行って、とりあえず社会に出て、とりあえず先生になってっていうのが結構いると思うんですよ。っていうかいるんです。

どうしてそういう子供が多くなっちゃってるのかなーと僕個人の考え方ですが、何となく教育というか、親の影響もありますけど、社会全体がそういう空気感を作り出しているんじゃないかって考えているんですよ。

江澤先生
江澤先生

うん、そのとおり。

ソルティー
ソルティー

学校ではこういう教員の働き方改革が進まないのが影響してそういう子が多くなってんじゃないかなってあります?

江澤先生
江澤先生

一斉学習っすね。金太郎飴づくりみたいな。

学校の特性上、しゃあないんですけど、みんなと一緒に、みんなと一歩を歩む。
それは大きいな。

ソルティー
ソルティー

みんなと一緒というと、みんなと一緒の考えじゃないと進めないっていう。

江澤先生
江澤先生

そう。例えばうちの息子は幼稚園ですけど、掛け算できるんですよ。
普通は掛け算って小2くらいじゃないですか。

やろうと思えば一年生の最後の教科書の問題も解けると思うんです。でも、30人いるので、30人が分かって次みたいな…。

そういうシステムじゃないですか。みんなできるまで待ってなきゃいけないんですよ(笑)

江澤先生の子供のノート。
投稿の時点では4〜5歳のハズだが、江澤先生の子供たちは自宅で主体的に学びを深めている。
ソルティー
ソルティー

みんなで足並み揃えていくことのデメリットが個性の埋没ですかね…。

江澤先生
江澤先生

これは明治時代から変わってない。すごく問題なんですけど、そこはしゃあないっすね…。

みんな個性を伸ばしてあげたい。でも、本音で言わせてもらえば、今の学校教育で個性潰れるくらいならそれ個性じゃねーと思うんですよね(笑)

ソルティー
ソルティー

特性と個性の違いですね。個性はもっと強いものってイメージが僕にもあります。

江澤先生
江澤先生

今の学校の授業くらいで潰されるんなら、そんなん全然個性とは言わないと思う。

本当になんかやりたい、好きなことなら、学校終わってからでも全然できるし。逆にそういうことは大切にしていってあげたいですね。

ソルティー
ソルティー

そうですね。本当にやりたかったらなんか言われなくても勝手にやりますからね(笑)

逆にそういう子はある意味不登校になっちゃうのかもしれないですね。合わないって感じで。「もっとこっちがやりたいのに!」って反発を起こすから不登校になってるのかもしれないです。

江澤先生
江澤先生

それもあるかもですね。やっぱり、学校も保護者も子供に与えすぎって感はあるのかもしれないです。

失敗しないように失敗しないように…、答えが見えすぎている。失敗の経験がないからいざ失敗した時に立ち直れない。

ソルティー
ソルティー

レールが準備されてるというねw

江澤先生
江澤先生

そうです。それをずっと続けて、いざ社会に出るって言って、答えがないじゃないですか。だからどうしたら良いか分からないってなってしまう。その失敗のトレーニングをしてこなかったというのはあるかもしれないですね。

教員の働き方改革が進まない理由を飛び越える勇気を持つ大事さ

江澤先生のインタビューで本当にたくさんの働き方改革が進まない理由が見えてきたなと思います。

まとめると…

教員の働き方改革が進まない理由
  • 働き方改革を進めると最初に必ず大きな負担を負うことになる
  • 校長が2〜3年で変わってしまうので、制度が浸透しない
  • 先生自身も7年くらいで異動になってしまう
  • 校務分掌にいたっては1年くらいで変わってしまう
  • 「行事減らそうか」って行ったら10分の10賛成しないと変わらない
  • 一人ひとりの価値観が違うので一つにまとまることがない
  • ビジョンや、どんな子どもを育みたいかという指針がない学校が多いので、決められない
  • 決められないので捨てること、改革することができない
  • 地域学校連携をするのにマネジメントを担当する先生に大きな負担がかかる
  • 授業はみんなできるまで待ってなきゃいけない
  • 与えすぎの教育を教員も保護者も望んでいるので一個人の意見で止められない

たくさんの人が絡み合う場だからこそ、軸というか、指針が必要だということ。

そして、指針を決めるにも指針となる人がすぐ異動してしまい、作れない・浸透しないというループになっていることがよく分かりました!

江澤先生が実際に学校現場で実践した教員の働き方改革もぜひお読みくださいね!

今回、インタビューを受けてくださった江澤先生の本はこちらです。興味があればぜひ買ってみてくださいね!