今回は学校運営協議会で、よく話題に上がる熟議についてお話をしていきたいと思います。
熟議と聞いて、「熟議って一体何をすることなんだろう?」「普通に話すんじゃダメなん?」と考える人がたくさんいます。
熟議とは、みんなで熟慮しながら議論を重ねるというものです。
ですけども、熟慮って何?議論って何?どうやって進めるの?っていう本質的なところが、イマイチわからないって方は多いんじゃないかなって思います。
学校運営協議会でみんなが集まっても全然改善しない…ということがあったら、それはちゃんと熟議ができていないからじゃないかなって思います。
なので、今回はその学校運営協議会における、僕なりの熟議のやり方をお話していきたいと思います。
熟議を行なう前に大切なこと
まず、熟議を行う前に大切なことが4つあります。
安心・安全の場を作ろう
1つは、他者の意見への敬意と理解を持つことです。
簡単に言うと、安心・安全な場作りをし、本音を言いやすくするということ。
この空間が作れないと萎縮し、本音ではなく建前で話すことになり、本質的な課題解決に向かうことが難しくなります。
そのためにはどんな意見でも非難しない、意見に対してアドバイスしたりしないということをグランドルールとするほうが良いでしょう。
ファシリテーターをつけよう
2つは、ファシリテーターを用意するということです。
ファシリテーターとは、その議論を活発化させるために、1人1人に声をかけたり、みんなが話しやすい雰囲気を作る人のことです。
ファシリテーターを最低1グループにつき、1人は立てるっていうことがかなり重要になります。
ファシリテーターは基本意見を言わず、みんなが話す!っていうことに集中し、議論の方向性が間違っていないか?着地できるか?どうかっていうのをコントロールしていく役目があります。
そのために一歩引いた視点で、敢えて議論にどっぷり浸からない。
第三の目でコントロールするっていうのが、ファミリテーターの役割です。この役割の人がいるかいないかによって、円滑な話し合いができるかどうかが大きく変わってきます。
熟議のテーマは敢えて一つに絞っておく
そして、3つ目が熟議のテーマはなるべく一つに絞っておくことです。。
たくさん話したい内容があると思うんですが、熟議は基本的に1つのテーマに絞って、しっかり話し合うっていうことが大事と思っています。
普通の話し合いだと、議題がいくつかあって、「これどうする?」って話し合いを進めるだけになります。
確かにそれでも決まることは決まるんですけども、誰かが基本的には考えてきた案を採用するかしないかっていうことになってしまいがちです。
しかも、喋らない人や、意見を出さない人も出てきたりする。
熟議には時間がかかるので、基本的には一つにするのが大切です。
一回で課題解決まで決めようとしない
4つ目に熟議は重ねてこそ意味があるものだと理解することです。
会議というと、必ず結論を付けたくなってしまうものですが、それでは本質的な課題解決に結びつかず、曖昧なゴール設定になったり、方向性を間違えたりします。
そのため、一回で課題解決までしっかり決めよう!と思わないこと。まずは集まって、話し合い、考えたことが正解であるという意識を持って話すと良いでしょう。
熟議の基本的なやり方
では、具体的な熟技の手順についてお話をしていきます。
私が行っている熟議のやり方では、このような流れになります。
- 事前に熟議するテーマと資料を共有する
- ブレーンストーミングでそれぞれの希望を抽出する
- 現状と課題を書き出す
- 解決したい課題を絞る or グループ分けする
- 現状と課題を書き出す
- 解決策で良いと思う案を抽出する
- 発表をして、決定
- グループが分かれていた場合、発表後にさらに決定事項を作る
では、それぞれの手順での詳しい内容を紹介します。
①事前に熟議するテーマと資料を共有する
1つ目は事前に熟議のテーマと資料を共有するということです。
なぜ、事前に連絡を行うのか?こんなの当たり前じゃないのか?って思うかもしれませんが、連絡ではなく共有です。
基本的に多くの学校運営協議会では、資料は学校運営協議会で集まった時に手渡されます。
それでは、熟議がスタートできないのです。なぜなら読み込む必要がそこで出てきてしまうからです。
そうではなく、事前の連絡の時に資料をすでに送ってしまって、「議題はこれについて話します。」っていうことを、1週間くらい前までには送っておくということが大事です。
こういうのを頭出し連絡というんですけども、これを行っておかないと イメージや、何を話すっていうことが、事前にみんなの頭の中で整理がつかないので、先に資料や、テーマを共有し、考えたり、見ておいてもらうのは、とても大切です。
②ブレーンストーミングで「こうなったらいいな」を書き出す
次にみんなで集まった後、ブレーンストーミングを使って、願い(こうなったらいいな)を一人ひとりたくさん書き出します。
ブレインストーミングとは、一種のアイデアを生み出す「集団発想法」手法であり、複数人で会議の際にアイデアを出し合ってブレストを活用して、アイデアや発想の整理する事をメインとして活用されています。
ブレインストーミングとは?ブレストの意味とやり方やルールの解説-LucidChart
ブレインストーミングは英語で、「Brainstorming」と呼ばれており、日本語では、「BS法」「ブレスト」や「ブレーンストーミング」とも呼ばれる事があります。
批判をせずにアイディアを出す時間と区切り、集中することで、「妙案を出さないと…」という空気が外れ、いろんなアイディアが多角的に出るようになります。
このあとも基本的にブレーンストーミングを使っていくので、最初にやり方に慣れる&堅い空気を取っ払う(アイスブレイク)という意味もありますね。
「まずはこうなったら良いな」っていうポジティブなほうに意識をセットする効果もあるのでブレストはオススメですよ!
③現状と課題を書き出す
ここからがいよいよ本題。1人ひとりが現状と課題をブレーンストーミングで書き出します。現状とは、自分が見えている、感じていることです。
今の現状に良いと思ってる人もいれば、悪いと思ってる人もいるのです。
その人でしか見えない視点をとにかく書き出してもらう。また、事前に出してもらった「こうなったらいいな」に対して、今の現状からどうしてうまく行かないんだろう?って思って書ける人もたくさんいるので、①を行っておくことも大事です。
課題は次のステップで必要なことなので、目標数(最低、5分で20〜30個)を決めてどんどん書き出してみてください。
④解決したい課題を絞る or グループ分けする
次にブレーンストーミングで出たたくさんのアイディアの課題をグループ分けしたり、重要なこと(1〜3個)に絞ります。
ここで議論する方法はたくさん考えられますが、短く済ませたいなら一人ずつ重要だと思う3枚の付箋を選び、選んだ理由を話してもらうのが良いです。
その上で、同じ付箋が被ったりするので、被ってきたものが重要な課題だと気づけるようになります。
⑤解決案を書き出す
次に行うことが、見えてきた現状や、課題を克服するための案をまたブレーンストーミングで1人ひとり書き出していきます。
この課題克服のための案…つまり解決策っていうのが非常に大切で、解決策を出さないと、課題解決の道筋が立たないんですね。
多くの学校運営協議会では、課題の共有までで終わってしまうことがあり、ここで解決策まで考えることが熟議では非常に大切です。(もちろん、理想というだけで出さなければいけないと肩肘張る必要はありません)
解決策はみんなが頭を抱えてわからなくなってしまう部分なので、ここもブレーンストーミングで、頭を柔らかくして、質より量を意識して、5分で30個を目安にとにかく書き出していきましょう。
⑥解決策で良いと思う案を抽出する or 優先度を決める
次に解決策の中で良いと思う解決策を抽出していきます。
抽出する前にはこうなったらいいな、現状・課題、解決策を共有した上で、具体的な解決策で良いと思ったものをみんな共有しあえているという一体感があるはずです。
つまり、ここでやっと具体的な話し合いが始まるのです。
実行できる数は多くないので、オズボーンのチェックリストのように、組み合わせたり、小さくできたり、大きくしたり、優先度をあげたり…というように考えて、なるべく少ない数に絞り込んでいく。
項目に沿ったチェックリストをあらかじめ用意して、それらに答えることでアイディアを発想するという手法です。具体的には、アイディア出しの対象やテーマを決め、チェックリストの項目のそれぞれに対してアイディアを出していくというものです。この発想法は、「チェックリスト法」とも呼ばれます。
この手法は、まったく新しいものを創造することが主な目的ではありません。今すでにある物事を改善・改良したり、応用・転用したりを検討する問題解決型のアプローチであるため、製造現場における既存の業務・環境の改善と相性が良いといえます。
アイディア欠乏の処方箋「オズボーンのチェックリスト」とその活用法 -ものづくりの現場 トピックス
「これなら今でもできるんじゃないか」とか、「これは実現しやすいんじゃないか」とかある程度、軸を決めて考えていくのが良いでしょう。
⑦発表をして、決定をしよう
最後にグループ間で発表を行います。そして、良いなと思う案をみんなで決定して終了です。
グループができるとグループ間の共有はできません。
たくさんの人が来ている場合、 どんな考えが出たのかっていうのは、周りのグループ聞かなきゃわからないんですね。
発表して、こういう風にするといいと思いました。っていうことを伝えていき、みんなで納得して決定するのです。
⑧グループが分かれていた場合、発表後にさらに最優先事項を作る
もし、グループが複数に分かれた場合は、発表後にもう一度、さらに大事なものは何かを決定していきましょう。
学校運営協議会が5人くらいだったら良いのですが、周りの保護者や、先生、子供など関係者を巻き込んだ話し合いだと10人を超えてくる場合があります。
この場合は発表しただけだと大事なことがありすぎて、意思決定ができない場合が出てきます。全体としてここに向かおう!となるためには発表後に全体でさらに優先度を決める必要が出てきます。
基本的にはこの2つの方法のどちらかを取ります。
- 優先度の高い項目を集めて、被っている項目がないか?を見た上で、さらに絞れるかを検討する
- それぞれのグループでプロジェクトチームを作り、分業して実践する
熟議を進める上で気をつけること
グループは3〜5人で1グループにしよう
基本的にはグループの人数は3〜5人で行うのが一般的です。なぜなら、多くの人が集まり過ぎると共有の時間や、一人ひとりの話す時間が少なくなってしまうからです。
終了後にマネジメントして議論しただけで終わらないようにする
終わった後に…これが重要なんですけども、熟議で発表された案をちゃんと実践に結びつけていくために、今度はマネジメントっていうのが必要になります。
これを行っていかないと、課題解決の策は出たけど、誰も進める人がいないっていう風になります。
誰かが進めないと、 せっかくの解決策が埋もれて、消えてしまうんですね。
なので、1つでもいいので、進めてみようっていう風にやっていくのはいいんじゃないかなって思います。
ここを進めていくためにも、地域学校共同活動推進員などのコーディネーターや、進捗管理ができる方を中心に進めましょう。
ただ、いない地域も多いと思うので、いない場合は、学校運営協議会委員の方々が進めていったり、教育委員会の方が進めていくと良いかなって思います。
もちろん、マネジメントをするのは誰でも構いません。
プロジェクトマネージャーは誰でも構わないのですが、教職員の誰かが進めると学校の負担が大きく増えてしまうので、教員以外がやるのが良いかなって思います。
ブレーンストーミングの合間合間に共有をしたり、アイスブレイクを入れる
どんなやり方や、進め方でも良いかと思うのですが、ブレストをして、いきなりまたブレストをするって流れだと良くないと思っています。理由は、ブレストは頭を使うので、みんな疲れるからです。
ブレストで書き出したら、みんなで共有するという流れにすると脳が少し休まるので、次のブレストもスムーズになります。重要な事項も決まるので一石二鳥です。
また、最初はブレストも固いし、人間関係も構築できていないことから始まったりするので、アイスブレイクをして慣らすのも効果的です。
でも、大事な流れっていうのは 1人1人、まずは自分がどう思っているかっていうのを書き出した上で、共有することがすごく大事です。
ブレストは共通目標数を設定する
ブレストをする時は共通目標数を設定しましょう。
みんなで話し合おうってなると、 意見が出なくなってしまうことが多いです。
1人1人の意見を大切にするって言った場合には、一人ひとりが少なくても良いからちゃんと意見を書いてみる、出してみるていうことが大事になります。
なので、必ず一人一案以上出るような工夫をするといいかなと思います。
僕は、「全員で30個を超えるようにしましょう」って共通の目標数値を決めることが多いです。そのようにすると、 「何かを書かないとこの数には達しないかもしれない!」っていう気になってきますので、ぜひ試してみてほしいなと思います。
熟議はいろんなやり方があるが、行動に移していくことが目的
僕の熟議のやり方を出してみましたが、あくまでもスタンダードなものかなと思います。
熟議で大切なのは
- 誰が
- 何を
- どのように
- いつまでに
- どんな手順で
を決めることが大切です。
ちゃんと行動に移せるようになれば良いので、内容は集まった人や、人数、環境、雰囲気によっても変えたりします。
なので、熟議にもいろんなやり方があるんだって思ってください。
そんな形で、今回は熟議のやり方についてお話をしてみました。これを参考にいろんなアレンジをしてみてくださいね。