この記事は以前、正会員だった方の記事を再構成したものです。

はる
この記事を書いてくれた人

育休中のママ教員です。2人目の育休で、見える世界が激変しました。
中学校教員としての自身の体験を書いていきます。

    こんにちは。私は育休中の教員です。

    この記事を読みに来たあなたも、もしかしたら私と同じような気持ちを持っているのかもしれません。

    産休・育休中に感じる不安
    • また育休前と同じように教えられるだろうか?
    • 教職に戻っても職員室に居場所がないんじゃないだろうか?
    • 自分の子どもとしか話していなくて孤独を感じる
    • 私がいない間、みんなに悪口言われているんじゃないだろうか?
    • 教育が進んでいるのに、私だけ置き去りにされている感覚がある
    • すごくゆったり過ごせてしまって、もう戻りたくないと思ってしまう
    • そんな私が駄目だなーって思う時がある

    そんな、周りの目が気になり、気持ちを左右されがちな私でも、堂々と休みを取り、仕事のことを忘れて、ゆっくりできる「余白の時間」が訪れました。

    そう、それは育休(育児休暇)です。

    育休は、女性教員がママになる時に、必然的に訪れる「余白の時間」。

    私は、この育休期間に、上記のような消極的なマインドを自己承認のマインドへと転換させることができました。

    例えば、今ではこんなことを実感しています。

    産休・育休中にいろいろな体験をしたことで今思っていること
    • ママ教員は素晴らしい!
    • 私は私、ありのまま、自然体でいいんだ!
    • どうやって自分を生かそうか、ワクワクしている!
    • 復帰後は、子育ての経験を学校教育に生かすことができる!
    • 子ども達の個性を尊重し、強みを見いだすことができる!
    • 既存の概念に捕らわれず、教育のアップデートができている!
    • 仲間と共に高め合っている!
    • 日常の小さな幸せに気付けるようになった!

    どうして、教員としてもママとしても自信のなかった私が、育休という余白の時間を充実感を味わいながら過ごせたのか?

    今回の記事では、育休明けて復帰したくないと思ってしまう理由を体験談を交えてお伝えします。

    教員の育休制度について

    赤ちゃんを抱っこしている育休中の女性

    教員の育休制度って、民間起業(1年間)と比べて3年間と長く、1年間も働かずにお金も貰えるなんて最高ー!やったー!って思いますよね?

    でも、実は育休入るまでの気苦労もあるし、育休中の不安もめちゃくちゃあるんです。

    産休・育休の長さとは…
    • 産休…出産予定日前後8週
    • 育休…産後8週後から復帰するまでの期間。出産日から最長3年間とれる。

    公立学校教員の育休は最大3年です。育休中に二人目を妊娠すると、さらに延長することも可能です。

    また、年度の途中で産休・育休に入ったとしても代わりの教員がクラスを受け持ってくれるので、安心して休みに入ることができます。

    育休期間が1年を越えると手当が出なくなりますが、自分の子どもと一緒に過ごす時間を十分に取ることができます。

    双子の場合どうなるの?

    双子(多子)の場合は、産前休暇は倍の16週になりますが、育休期間は3年のままです。

    ちなみに私立学校の育休期間は学校により異なります。ある学校では、原則、子が1歳に達するまで、と規定しています。

    教員の育休制度の課題点

    泣いている赤ちゃんをあやすママ

    課題は制度ではなく、世間の目

    実際に教員をやっていると分かりますが、3年まるまる、ぎりぎりまでとる人はほぼいません。

    私の学校で起こったことですが、2人続けて出産で、4年ほど休んでいた先生を、「浦島太郎」といって揶揄する先輩ママ教員がいました。

    私たちのころは~…。

    という言葉を聞いて、妊娠中だった私はとても嫌な気持ちになりました。

    はる

    全部丸投げできた時代と違うので、昔の価値観を押し付けないで欲しい…。

    実は育休3年も取れないルールである

    2人子どもがいたりすると、自治体によって「下の子が満一歳になる前に復帰しないと、上の子は保育園を退園させます」という規約があり、これも考慮して、育休の期間を決めるしかないという現実があります。

    はる

    この制度はいろいろな事情があると思うので分かるんですが、実際に育休する前まで知らないってのはどうなのかなぁ

    こんな現実もあり、下の子が満一歳になる前に復帰を目指して、保育所申請します。

    この時、保育所申請が落ちたらどうなるの?

    落ちたら役所側の調整不足ということで、上の子は退園しなくても大丈夫になるようです。年度末まで育休延長という形をとり、四月に復帰するケースがほとんどです。
    (年度始めの入所には入れる確率が高い)

    学校側としては、欠員補充とかいろいろめんどくさいようで、年度当初の4月に来てほしいという想いもあるようです。

    学校側の面倒くさいと思う理由

    私の場合は年度途中で育休取ろうと思っていたのですが、考えが甘かったのか、管理職から要望が…。

    え?四月から年度途中まで勤務してくれる講師の人を探すのは、すごく難しいんだよね…。なかなか条件に合致する人いないんだよ。できれば、四月から勤務してくれると嬉しいなあ。

    講師は基本的に1年ごとの更新なので、こちらの希望する期間(8カ月間)の契約の人を探すのは不可能に近いことらしいのです。

    そのため、私は『2年4ヶ月』に復帰するという決定をせざるを得ませんでした

    他にも苦痛だったこと

    ※育休に入る前にも、「誰か知っている人で、講師やってくれる人いない?」と管理職から毎日のように聞かれ、空きをつくってしまう罪悪感がつのりました。

    復帰した時に悪口を言われる可能性が高い

    以前現場で聞いた、年度末の井戸端会議での言葉。

    今度、育休明けの先生が来るらしいよ。二人産んだからって4年も休んでて、浦島太郎だよね~。現場のこと分かってないでちゃんとできるのかしら。私たちのころはもっと休みも短くて~~。

    それを聞いたとき、自分も育休明けにはそうやって噂されるのか、と思いました。

    出産後、育休明けのことを考えるようになったときに、その言葉が頭に浮かんできて、

    「浦島太郎にはなりたくない」、「復帰した時に悪口いわれたくない」、「生徒にもっといい授業をしたい」、「過去の失敗を挽回したい」と、「不安をなんとかしたい」という思いが浮かぶようになりました。

    教員が育休中に感じる不安

    実際に教員が育休をするとさまざまな想いが湧いてきます。それはポジティブなものばかりではなく、ほとんどがネガティブです。

    実際に私が体験した想いを分類してみました。

    休みの過ごし方が分からない不安

    産休に入る前には、自分の机の資料を整理整頓し、無事に引継ぎも済ませました。
    重いお腹を抱えての最後の授業では、生徒にお別れ会を開いてもらい、胸いっぱいで現場を後にしました。

    妊婦でも夜の8時、9時まで勤務していたこともあり、「やっとゆっくりできる~~!」と嬉しい気持ちになりました。

    しかし、次に沸き起こってきた思わぬ感情が「この休みって、何すればいいの?」という思いでした。

    学校現場で勤務している時は、毎日『生徒のこと、日々の授業・作業のこと』を考えて頭がいっぱいだったのに、育休という休みをもらえても、休みの過ごし方が分からなかったのです。

    いきなり余白ができても、過ごし方・楽しみ方がわからない状態になっているのが不安で、「育休 過ごし方」でネット検索したことを片っ端からやって時間を使いました。

    例えば、赤ちゃんの洋服・グッズを揃えるために何時間も店を回ったり、平日限定ランチがお得なお店に行ったり、エステに行ったり、暇なときは何時間も昼寝をしたり、スマホをいじってネットサーフィンをしたりしました。

    解放感は感じていて、有り余る時間をゆっくりと過ごしたのですが、何故か襲ってくる不安と虚無感。

    はる

    なんか物足りないなー。こういうとき、何をすればいいんだろう?

    こんな風に毎日感じていました。

    自分が言葉を発さなくなっていく孤独

    私は子どもが生後4カ月になるまで、買い物以外は外に出ませんでした。

    「外には菌がたくさん。この子が風邪を引くリスクもあるから外出は控えよう。」
    「家の中なら安全だし、面倒な人間関係のトラブルも起きない。一日中パジャマでいられるし、ずっとこのまま家で過ごしいてよう。」

    おむつ替えや授乳、寝かしつけといった作業をこなす日々。

    そうして家にこもって、喋れない子供と二人っきりで過ごすうちに、全く頭を働かせず、考えることをやめ、言葉を忘れてしまいました。

    おもちゃで遊んでる時に「できたね」というくらいしか言葉を発しませんでした。

    はる

    どうしてこんなに言葉がスムーズに出てこないんだろう。あれ、とかこれ、とかが多くなったなあ。怖い。もう授業なんてできないんじゃないか…

    小さな部屋の中で、二人きり、遠くの世界に行ってしまったようでした。

    戻っても居場所がないんじゃないか

    育休中のママ教員と、児童館やランチで会っても、『人事の不安』『これからやっていけるかどうかの不安』ばかりが話題に上がりました。

    育休明けを考慮してもらって、『特別支援学級担当』もしくは『担任外』で「部活は軽い文化部が理想だね」と話はするのですが…。

    それは消去法でなんとかここならやっていけるかもしれないという選択で、積極的で明るく希望あふれる未来は見えてきません。

    「ママ教員って、子どもの風邪やケガで早退することも多いし、お迎えで早く帰らないといけないし、アテにならない存在なのかな…」

    「中堅って言われたって、学校の中心でやっていこうって気持ちにはならないよね…」

    「我が子のことを一番に見たい。正直、出産前のように家庭をないがしろにはできない」

    「期待されない存在として戻るんだろうなあ」

    そんなダークな気持ちが渦巻いていました。

    また教えられるだろうか

    教育のプロという概念の崩壊

    狭いアパートで赤ちゃんをお世話して過ごす生活。

    初めての子育てで正解が分からない中、「これでいいのかな」とおむつ替えや授乳、そして肌トラブルなどの小さなことで戸惑い、心配する毎日。

    自分の体調が悪い時に限って、子どもの機嫌が悪かったり、上手に寝かしつけができない時など、

    「子どもって、自分の思い通りにならないんだ」

    と痛感しました。

    思い返すと、自分の母は私たち子どもを育てている時に、とてもイライラしてました。

    それが嫌で、『私はイライラを子どもにぶつける母親にはならないぞ』と思っていたのですが、今、私は子どもにイライラしている…。

    「あれ?この思い通りにいかなくてイライラする気持ち、教室で感じてたな。」
    と思い出しました。

    学校現場での自分の言動を振り返ってみると、生徒をコントロールしようとする声掛けばかりしていました。

    そして、保護者の方に理解がない・協力してくれないなんていう感情をもっていたことが蘇ってきました。

    私は、子どもを育てるということの何をわかっていたんだろう…。
    子どもの成長を1から10まで見ていない(我が子を育てていない)自分が何を言っていたのだろう。

    こんなに可愛い我が子を前にイライラしたり、たくさんの感情や責任感や罪悪感を味わいながら、母は一生懸命子育てをしてきたんだ。
    親の、子どもへの愛情も、わかっていなかった…。

    社会との繋がりが絶たれ、自分が何かの役に立てているという実感もなく、

    「自分は教員としてやってきたけれど、ほんとに人を育てるプロなんだろうか?」

    「どうやって外の人と関係を深めていけばいいのか」

    などという自分に向き合う時間となりましたが、分からないことが分からない日々は不安でいっぱいでした。

    自分だけ取り残されているという感覚

    最新の教育についていけないのではという不安もありました。

    研修を受けておらず、生徒に接していない自分は、指導力や生徒を見取る感覚がなくなってしまうのではないかと心配になりました。

    うまくいかなかった生徒とのやり取りもフラッシュバックしました。

    でも、解決するために誰かに相談したり、調べたりしようとは考えませんでした。

    (考えたくない…。もう終わったことだ。)

    こう思い込もうとしても、悶々と負のイメージが溢れてきます。

    「うまくいくのだろうか?」

    「生徒へどんなことができるのか?」

    「また同じ失敗をしないだろうか?」

    「子どもが熱を出したらどうしよう」

    「保育園になじめるのか?」

    「同僚の理解はえられるのか?」

    …などなど。

    考えるたびに、復帰に向け、荷が重くなりました。

    もう戻りたくない

    産休に入る前、

    「もう頭抱えて問題児のこと考えなくていいし、辛いことから逃れられるー!」と、休めることがとっても嬉しくて、ついニヤけてしまうほどでした。

    育休中は、我が子の風邪や家事などのつらいことがあっても、そんなに辛さを感じませんでした。
    なぜなら、現場で子どもをコントロールしようとしてうまくいかなかった経験があったからです。

    コントロールしようとしても、子どもは言うことを聞かないし、自分が苦しかっただけだった。

    皮肉にも、職場での失敗経験から、我が子が自我を芽生えさせる前には「子どもは思い通りにいかないのが当たり前」というマインドが出来上がっていました。
    この部分は、マイナスがプラスに転じた点だと感じています。

    しかし、我が子の子育てに心の余裕をもてるのは、子どもが1人だからというのもあり、それと学校現場の生徒40人の対応を考えると「教員の仕事のがよっぽどつらい」というマイナスの思いがありました。

    ふとした時に、職員室で「とにかく問題を起こさないようにしたい」と消極的になっていた自分を思いだしていました。

    「復帰したとして、自分に何ができるんだろう」

    「バリバリ動ける独身の先生や、でかい声だして威圧できる男性教員のほうが、どうせ重宝されるし、生徒も言うこときくし…」

    「どうせ、ママ教員はお荷物なんでしょ?」

    とひがみっぽくなっていました。

    部活動があると家庭と両立は難しい現実

    中学校勤務だったこともあり、育休明けの生活をイメージすると、部活もあって帰りが遅い仕事と家庭を両立することは難しいなあと考えるようになりました。

    勤務校では、全員顧問制で、四月一日に、常勤の職員全員に対して部活動の割り当てがされます。しかし、育休明けの先生は、希望により、「PC部」「家庭部」などの平日の活動時間が少なく、土日の活動がない部活に割り当てられる可能性は高くなります。

    実際に、同僚のママ教員の声をきくと、

    「自分の親には迷惑かけて責められるし、我が子は登園拒否になっちゃっても、向き合う時間がないし…、もうこの仕事やめようかな。」

    と苦しい胸の内を明かしてくれました。

    「愛する我が子を一番に見てあげたい、でも、目の前に生徒たちがいる、自分がやらなければ、他の先生に押し付けてしまうことになる、どうすればいいんだ…。ママ教員は幸せになれないのか?」

    と、明るいイメージがまったく持てませんでした。

    育休が終わるときには

    「もう終わっちゃうのか…、戻るの嫌だな」

    という思いと

    「もしかしたら、育児の経験を生かせるかも…」という希望のどちらもありました。

    しかしながら、「戻りたくない」って思うのって、教員失格じゃないか?と自分を責め始めてしまうのです。

    育休教員がつらい理由は時が止まること

    自分のつらかった体験談をお話させていただきました。

    私が育休で辛いと思ったのは、以下のポイントです。

    • 課題は制度ではなく、世間の目が気になる
    • 育休は3年も取れないルール
    • 復帰した時に悪口を言われるつらさ
    • 休みの過ごし方がわからない不安
    • 自分が言葉を発さなくなっていく孤独を感じる
    • 自分が取り残されて、もう戻れないんじゃないかという不安
    • 家庭と仕事の両立が描けない

    私が一番伝えたいのは、育休をとることで時が止まり、孤立した小さな世界で子どもの成長とは裏腹に退化していく感覚を味わう辛さがあるということです。

    育休のつらさは、なかなか分かってもらえませんが、私の感じたことを書いてみました。

    ここまでお読みいただきありがとうございました!