- 熟議が何か分からない方
- 熟議は通常の会議とは何が違うのか分からない方
- 熟議を使った実際の事例を見たい方
熟議という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
熟議とは、多くの当事者と本音をぶつけ、課題発見から解決に向けた議論を行うことです。最近では対話の重要性が高まっており、この熟議というやり方が密かに広まっています。
しかし…
- 熟議とは何か?
- どうしたら熟議になるのか?
- 具体的にどういう話し合いをするのか?
ということはなかなか分からない方も多いかと思います。
そこで今回の記事では、熟議の意味・定義や、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)での具体例などを紹介していきます。
熟議の意味について
それでは、熟議とは何なのか?から知っていきましょう。
熟議の特徴
熟議は文部科学省でも推している手法の一つです。
多くの当事者による「熟慮」と「討議」を重ねながら政策を形成していくこと。
熟議とは-文部科学省
政策を形成する際、
①多くの当事者(保護者、教員、地域住民等)が集まって、
②課題について学習・熟慮し、討議をすることにより、
③互いの立場や果たすべき役割への理解が深まるとともに、
④解決策が洗練され、
⑤個々人が納得して自分の役割を果たすようになる、
というプロセスのことを言う。
簡単に言うと熟議とは、多くの当事者が熟慮と議論を重ねながら共通認識を持ったり、課題解決を一緒に考えていくことです。
また、円滑な熟議には必ず第三者によるファシリテーションがあるのも特徴の一つです。
ファシリテーターがいると、討論がとても話しやすくなるので用意したほうが良いですよ!
- ファシリテーションとは(クリックして詳細を表示)
熟議では、さまざまな人が議論し合い、社会的合意を図っていくのが大きな特徴でしょう。
熟議の定義
どうしたら単なる話し合いではなく、熟議と呼べるようになるか?それにはこのようなポイントがあります。
- 議論を進めるファシリテーターがいる
- 多様な視点や知見を持つ人々が集まる
- 共通目標のために本音で意見を交換する
- 熟慮と議論を通じて最適な解決策を導き出す
熟議は本音をぶつけ合うことが大切になるため、すべての意見が肯定される安心・安全の場作りも重要でしょう。
熟議の効果とメリット
熟議は、参加者同士が意見を交換し、お互いの立場や価値観を理解する機会を提供するため、3つのメリットが生まれます。
- 理解の深化
- 参加者の意識改革
- 課題解決の促進
そのメリットについて詳しく解説します。
理解の深化
1つ目は理解の深化です。
熟議ではさまざまな分野や、価値観を持つ人達が集まり、討論します。
さまざまなバックボーンを持った方と話すことで、今まで見えなかった背景や、視点を知る機会にもなり、相互理解が生まれ、共通認識が形成されるようになるのです。
課題解決をするためには、お互いがなぜそう思っているのか?を理解していくことが大切となるため、理解の深まりは重要な要素の一つとなります。
多くの批判は無知から始まります。まずはその人がどうしてそのような言動をするのか?を知ることから始めると良いと思います。
参加者の意識改革
2つ目は参加者の意識改革です。
さきほどのように参加者がそれぞれの専門知識や経験を持ち寄るということは、相手の話を真摯に受け入れることになります。
参加者は自身の意見を述べるだけでなく、単なる話し合いや意見交換を目的とせず、『当事者』として本音をぶつけるという原則があります。これは言うほど簡単ではなく、参加者一人ひとりが他者の意見や情報にも肯定的に耳を傾けることが重要なのです。
これは、自身の意識や行動に変革が生まれるキッカケとなるものであり、熟議では個々の行動の変化を促す効果があると言えるでしょう。
課題解決の促進
3つ目は課題解決の促進です。
熟議の特徴は、相互理解、課題の共有、役割の明確化、社会的合意などです。つまり、議論を重ねることで、最終的には課題解決に向かっていくようになるのです。
学校運営協議会の場で、広まってきた熟議ですが、民主主義の発展や市民と政府のコミュニケーションを図るための重要な手法とされています。
熟議は、全員の総意による意思決定や、問題解決を実現するための一手法であり、様々な分野で活用されています。
熟議のやり方
熟議を行う上で重要なポイントがいくつかあります。
- 意見を出しやすくする場作り
- さまざまな角度からの情報共有と課題の発見
- 課題解決策の妥協と納得
学校任せにするとコミュニティ・スクールなのに予定調和で何も議論できずに終わってしまう会議になります。この記事のような話し合いは絶対に回避したい内容です。
以下に熟議としてうまく行うポイントを詳しく紹介します。
意見を出しやすくする場作り
まず絶対に大切なのが意見を出しやすくするための場作りです。
熟議では、個々の参加者がそれぞれの意見を尊重し、敬意を持って受け入れることが求められます。他者の意見に耳を傾け、理解を深めることで、新たな視点や情報を得ることができます。
しかし、異なる意見や経験を持つ人々が集まると、価値観の違いによってぶつかったり、アドバイスをされて批判的な思い込みをする方もいるのです。
これは本当に多い!価値観が違う人同士が互いを理解することは簡単なことではありません。
専門家や実務家、利用者や関係者など、様々な立場や視点を持つ人々の参加を促し、それぞれの視点を共有することは大切ですが、共有できる前提条件を作ることが最も大切となります。
さまざまな角度からの情報共有と課題の発見
次に大切なのが、さまざまな意見から本質的な課題を見つけることです。
意見が活発化すると情報は発散・拡散されるばかりで何が課題解決に繋がるものなのかが見えてきません。
広げた風呂敷をちゃんと畳むように明確な目標(ゴール)を見据え、本質的な課題を発見していくことが大切です。
何度繰り返しても話すだけ話して、一向に進んでいる気がしない…というケースもあります。最初から最後まで目標は忘れないほうが良いかなと思います。
課題解決策の妥協と納得
最後に妥協と納得です。
熟議では、議論の焦点を明確にするために、課題設定と解決策の絞り込みが行われます。
しかし、必ずしも全ての意見が受け入れられるわけではありません。一部の参加者が妥協する必要がある場合もあります。妥協が生じた場合でも、参加者が納得感を持ち、共通の目標に向かって行動することが重要なのです。
この妥協点を見つけ出すのに一番時間かかるんですよね…。
参加者間での協議や意見交換を通じて、妥協や優先順位付けを行い、最適な解決策を見つけ出すことがポイントになるでしょう。
熟議の具体的で詳しいやり方について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
熟議のコミュニティ・スクールでの具体的な活用例
最後にコミュニティ・スクール(学校運営協議会)で熟議を活用してきた私自身の事例を紹介します。
本当はかなり具体的に話したいですが、ここに掲載できる範囲でご了承ください。
熟議は問題解決のために利用される手法であり、その効果は教育分野でも期待されています。特にコミュニティ・スクールでは、熟議を通じて地域との連携を強化するための活動が行われているので、ぜひ参考にしてください。
教育カリキュラムにおける熟議
学校では教育カリキュラムを作っていきますが、この話し合いを熟議によって行ったことがあります。
学校の教育カリキュラムはすでに限界を迎えており、詰め込み式になっています。どうして過去のものを捨てられないか?というと、地域が望んでいると思っているからです。
しかし、ふたを開けてみると一部の保護者が切望しているだけのケースが多く、それが本当に必要なのか?をよく吟味する場がなかったので、学校運営協議会として協議をすることになったのでした。
今まではカリキュラムは校長が決めて、学校全体で実行…というものでしたが、これからは学校運営協議会が決めて、学校も含めた地域全体で実行という考えになっていくと感じられました。
地域見守り活動での連携を強化する熟議
地域との連携強化として話し合いが行われるのはよくあることですが、この中でも地域での見守り活動を活性化させたいという協議を行いました。
見守り活動は学校の外で行われる活動ですが、本来は学校の先生が行う仕事ではありません。しかし、多くの学校で学校の先生が見守りを行い、防犯パトロールのようなことまで行っています。
見守り活動は地域で行うべき活動であるということを意識させ、どういうスケジュールで、どういう内容で、そして誰が管理していくのか?などを明確に決めていく熟議を重ねていきました。
150周年記念式典での熟議
150周年記念式典は、学校の歴史や伝統を称える重要なイベントです。このような記念式典においても、熟議が活用されました。
熟議を通じて、学校関係者や地域の関係者が集まり、記念式典の企画や内容について熟慮します。
アイディア出しから、企画・実行委員会の策定など、熟議の実施によって、先生・地域・保護者と全員が納得し、共感する150周年記念式典を実現することができました。
熟議とは社会的合意を作り出す手法
それではまとめです。
熟議を使うことで、全員が納得する社会的合意を作り出せるのが大きなメリットだと思います。しかし、実際にやってみるととても難しく、そもそも本音で話し合うというのは簡単ではないのです。
そのためにはたくさんの工夫や、努力が必要だと感じています。
実際に熟議をやってきた工夫はこちらの熟議のやり方でまとめたので、こちらもぜひご覧ください。