保護者(地域)と教員ってなんだか溝がありますよね。
基本的に地域の人が教員から信頼関係を得たいとは思わないものですが、地域学校協働をする!理想の学校を作りたい!と思った時、地域の人が教員から信頼を得るのはとてつもなく難しいです。
むしろ、そんな情報はどこを検索しても見つからないと思います。なぜならかなりマイノリティ(少数派)の考え方だからです。
しかし、今、教育は大きく変わろうとしています。
地域から学校を作りたい!地域から学校を変えたい!と思う人も増えてきました。
今回は地域側からアプローチして、先生たちの心をどう変えていくのか?私自身の体験談を交えながら具体的にお話していきたいと思います。
なぜ教員は保護者(地域)と関わり合いを持ちたくないと思っているのか?
教員は保護者と密接な関わりを持ちたいとはそんなに思っていないケースが多いです。地域と連携していきたいと言っている教員がいたとしても、その胸中は複雑な想いが渦巻いているのです。
保護者や、地域としてできることはそう思っていることを認めていくこと。
教員がどのようなことを恐れているかの代表的なものを5つ用意したので、まずは理解していくようにしてみてください。
噂が立ったら学校が非難されると思っている
1つ目は学校が非難されると思っているです。
「私たちは絶対にそんなことしない!」って言う方は多いのですが、その本人だけじゃなくて、その周りから何か言われることも恐れています。
大体、このように率先して先生の気持ちを理解しようと動いている人というのはマイノリティ(少数派)で、影響力がある人が多いです。
そこから噂が立ち、あることないことを勝手に言われ、学校の悪い噂が広まってしまうことを恐れていたりします。
だからこそ、そういう影響があるかもしれないと理解をしていることが大切になります。
個人情報が漏れることが怖い
2つ目は個人情報が漏れてしまうことが怖いです。
個人情報の取り扱いは非常にシビアになっています。電話番号や、メール、住所が漏れるのは緊急連絡網がなくなった背景からも分かるように確実に駄目。
その上で、保護者の名前や、生徒の名前、顔写真、性別や、年齢、はてはその子の書いたテスト(筆跡)や、テストの点数まで個人情報として範囲を広げているケースが多いです。(この辺りは学校によって認識が違っています)
個人情報というものがよく分からない情報だからこそ、子どもに関わる情報はすべて隠さなければならないと思い込みをしている教員は本当に多いのです。
それを理解しないまま、「手伝いたい」というと個人情報が漏れるのが嫌という教員とぶつかってしまうケースが増えてしまうのです。
特にテストの点数、成績…これらは個人情報ではないにも関わらず徹底して隠すことが求められたりします。
しかし、それらを容認してもらわないと丸付けボランティアはできません。こういうジレンマが負担を増加させています。
先生の働きぶりを見て、駄目だと言われるのが嫌
3つ目は自分たちの働きぶりを見て評価されるのが嫌です。
教員に手伝いたいと言うと、「私たちの学校に入ってこないで欲しい」って言われるケースは非常に多いです。
これを私たちの環境に置き換えて考えてみて欲しいのですが、一企業(もしくは一家庭)に対して、周りの地域住民がこぞって「手伝いたいです」と言って集まってきたり、「これはあなたたちの仕事じゃないですか?」とクレームの電話がかかってくる…なんて状況になったら、「もううちに来ないで欲しい」って思ってしまうのは当然と言えば当然です。
教員も一人の人間で、地域の人たちを中に入れれば、自分たちの働きぶりを見て評価されることを許可したということに同意したということでもあります。
もしかしたら、その人経由で噂が広まってしまったり、誤解が広まってしまうかも…なんて可能性を心配してしまうがゆえに「入ってこないで」と言ってしまうのです。
中に入るには相当な信頼感がないと入っていけないということがよく分かるでしょう。
仕事が増えると思っている
4つ目は仕事が増えると思っているです。
実際、仕事は増えます。何かイベントをやろうと思えば夜に打ち合わせに出なきゃいけないこともあるし、土日に話し合いをするかもしれない。
学校業務とは別に頼まれるかもしれないし、他のボランティアとの調整もやるかもしれない。
また、手伝って欲しいことをやってもらうのに、保護者(地域)でもできることを見繕ったり、受け入れたら受け入れたで「これってどうすれば良いですか?」と聞かれることも多くなります。
仕事を減らすためにボランティアを入れているのに、仕事が増えてしまったのでは意味がない!他の仕事が立て込んでいるのに、そんなことまで気が回らない!
そう先まで気が回ってリスクヘッジをする頭の良い先生ほど、「仕事が増えるから」と言ってしまうのです。
実際に仕事と思えば、仕事は増えています。
なので、活動は緩く、先生にとって参加するメリットがあり、自由参加であるということを強調するのは大切かな。
関わりを持つことで、他の保護者から非難されることを恐れる
5つ目は「他の保護者から非難されることがある」です。
よくあるボランティアのダメな事例でボランティアで手伝いにきて、子どもの点数を知ってしまい、「あの子は頭が悪いみたい」みたいに広める人がいるのです。
逆に頭が良くても「あの子はめちゃめちゃ頭良いのよ〜」と噂が立ちます。
褒めることは良いことでも、それを受け取った人から評価されているということが怖く、「あの子を優遇してあげてるみたい。」、「あの保護者と仲良い。」みたいなひがみを含み、湾曲して学校に伝えてしまう人がいて、それを恐れているのだなと感じます。
実際、ボランティアに来る以上、成績を知るのはしょうがないことです。ただし、それを『評価』するのはボランティアの人たちではありません。
本当にその子の良さを知っているのは毎日会う親と先生です。一部しか知らないボランティアさんがその子の評価をしないようにしましょう。
保護者(地域)の人が教員から何でも話せる信頼関係を得るまで
では、保護者(地域)の人が教員から何でも話してくれる信頼関係を得るにはどうしたら良いのか?
結局は人と仲良くなる方法+周りをどうやって押さえていくか?という2つに絞られます。その上で実際にたくさんの教員から信頼感を得てきた私の経験を元に、非常に効果が高かった具体的な手法をお伝えします。
基本的に聞き役に徹する
大事なことは聞き役に徹することです。
基本的に話を聞きます。特に最初のうちは自分の話を基本的にしないで、相手の話を遮らない、一方的に話されることも何度も繰り返していきます。
そうすると、「この人はよく話を聞いてくれる人だ」と理解してくれるようになります。
少し信頼関係が出てきたら、自分の話を短くコンパクトに伝えたり、こちらからさらに理解が深まる質問を投げかけます。
具体的にはこの4つの質問を投げかけると良いでしょう。
- 今までの教員人生を聞く
- 趣味を聞く
- 先生になった想いを聞く
- 出身地を聞く
- これからどうしていきたいかを聞く
出身地や、住んでる場所など、個人情報が関わってくる場合には「話したかったらで大丈夫ですよ」と付け足して伝えることで、「個人情報を集めるつもりの質問じゃありませんよ」というアピールにもなり、さらに相手が話しやすくなります。
何度もアプローチをする
もっとも効果が高かったのが、何度もアプローチすることです。
人には単純接触効果というものがあり、何度も繰り返して会うことで人を好意的に思ってしまう心理があります。
- 単純接触効果についてはここをクリック
-
はじめのうちは興味がなかったものも何度も見たり、聞いたりすると、次第によい感情が起こるようになってくる、という効果。たとえば、よく会う人や、何度も聞いている音楽は、好きになっていく。これは、見たり聞いたりすることで作られる潜在記憶が、印象評価に誤って帰属されるという、知覚的流暢性誤帰属説(misattribution of perceptual fluency)で説明されている。また、潜在学習や概念形成といったはたらきもかかわっているとされる。
図形や、漢字、衣服、味やにおいなど、いろいろなものに対して起こる。広告の効果も、単純接触効果によるところが大きい。CMでの露出が多いほど単純接触効果が起きて、よい商品だと思ったり欲しくなったりするのである。
単純接触効果 – Wikipediaつまり、何度も会えば好きになってしまうのです。この効果を利用すれば誰からでも信頼を得ることができます。
私も最初は校長から「来なくて良い」と言われたことがあります。でも、その場合は校長じゃなくて教頭や、教務主任の方と会う約束を取り付け、その上で校長にも「今日もよろしくお願いします」と行くたびに挨拶しに行きました。
すると「なんかいつもやってもらって悪いね」と関係が緩和され、最終的には味方になったというエピソードがあり、この効果は侮れません。
信頼感を得るには手を変え、品を変え、何度も会い続けるということをまずは頑張ってみてください。
これは人を好きになるプロセスと同じです。効果は最も高いと思うので、何度も何度もやってみましょう。
先生たちのためなんです!それが子どもの幸せなんです!と言い続ける
3つ目は個人的なことではなく、社会のために動いていると認識させることです。
先生たちが一番モチベーション上がることは何か?それは子どもたちの成長に繋がることです。基本的に先生というのは子どもたちが大好きなのです。
それがある個人の、しかも大人のために動く先生はいません。それよりも子どもたちのために働きたいと思うのが先生の常です。
そこをうまく認識させ、「あなたのためなんです」、「それが子どもの幸せに繋がります」と2つのワードを同時に言われると自分にも良い影響があり、子どもにも良い影響があると無視できなくなります。
というか、無視したら教員を何のためにやっているのかが分からなくなってしまうので、そこから気持ちを変えていくようにします。
もちろん、言葉にしたからには態度でもあなたのため、子どものためを示していくと「この人は本当に信頼できる人だなぁ」と認めてくれるようになるでしょう。
どんな小さなことでも丁寧にやる
4つ目はどんな小さなことでも丁寧にやることです。
基本的に大きなことから入っていきたいと思う保護者(地域)は多いでしょう。でも、先生たちが困っているのは特定の部分ではなく、もっと日常的な部分で毎日起こっていることなのです。
例えば、子どもたちを見る目が足りないとか、プリントを印刷している暇がないとか、一息つく暇もないとかです。
このようなことをできる限りやれるようにしたり、もっと小さな部分だと花壇の掃除、校庭の草取り、立哨当番、連絡帳でしっかり連絡をとり、感謝を伝える。これだけでも大きな負担軽減に繋がります。
僕は校庭の落ち葉を集めただけで相当の感謝をされました。実際に作業すると集めるまでに2時間くらいかかっちゃったんですよね。
これも仕事。そして、その時間は子供のための時間ではなく、周りから「汚いね」って言われるのを防止するため。だからこそ有難がられるのです。
お金など、自分への目先のメリットを後回しにする
5つ目はお金などの目先のメリットを後回しで考えることです。
お金は活動を継続するために必ず必要になるものです。事前に考えられるなら良いのですが、信頼を得る前にお金のことばかり考えていると、顔や、行動…特にその言葉が出てきてしまいます。
活動の継続のために「なんとかお金が欲しい!」と言う気持ちは分かりますが、その気持ちは後々、自分だけじゃなくて相手も必ず必要になります。
その前に信頼関係と、最大限できることをやり、価値を事前に感じさせておくと「じゃあ、活動を継続するためになにか考えよう」と相手が自分ごととして捉えてもらいやすくなります。
実際に僕の場合は、最幸のボランティア状態を作ることで、「来年からもお願いしたいので予算をとってきました」と先生が動いてくれたりするケースが結構ありました。
本当に必要だと思えばどこかしらからお金を用意してくれたりする場合もあるのです。
保護者(地域住民)の意見は「一旦、私を通して」という仕組みを作る
6つ目は地域からの意見や要望は地域の代表を通すという仕組みを作ることです。
学校の先生の中で疲れたり、精神的に辛いと感じるものは保護者のクレームです。クレームを受け取って元気になれる人ってなかなかいないでしょう。
そこで、地域の意見は一旦、私を通してから!という状態を作るのです。そうすることで、先生の時間と幸せも増えて、子供も幸せになっていき、結果的にクレームが少なくなっていきます。
最初からこれを仕組みとして実現するのは難しいので、保護者向けの講座などを開いて、保護者との信頼関係を得ながら、相談・質問があったら私に言ってくださいね!と言うと、段々、先生たちへのクレームの数も減っていくでしょう。
実際、このように地域からの意見を吸い上げて、大事なところだけ先生に聞くという方式を作ると、対応もスムーズになるみたいで、お互いに幸せになるケースは多いようです。
地域住民だと先生たちよりも柔軟に動いたりできるんでしょうね。
保護者が教員から何でも話せる信頼を得るにはコツコツと積み上げる
それではまとめです。
- 教員からすれば先生の気持ちを理解しようとするのは少数派であり、ありがたい存在
- 教員は子供に関わる個人情報はすべて隠さなければという間違った認識をしている
- 教員は地域の人から「あの人はダメだね」って言われるのが怖いから学校に入れない
- 教員は地域を入れると仕事が増えると思っている
- 信頼を得るには自分で話さず話を聞く
- 信頼を得るには単純接触効果でとにかく会う、話す
- 信頼を得るには先生のため!子供のため!と言い、小さなことでもやる
- 信頼を得るには信頼の構築を最優先にする
- 信頼を得るには地域の意見は私にというリーダーシップを発揮する
教員の信頼を得るというのは言うなれば、彼氏・彼女の存在になるくらい難しい壁です。
しかし、教員も人です。絶対にわかり合えないという存在ではありません。
大事なことは相手に心を開いてもらうと考えるのではなく、まずは自分から心を開くこと。そうすれば自然と心を開いてもらえるようになるでしょう。